アトリエで暮らすような
「ナラ板目材とステンレスヘアラインをのオーダーキッチンと背面収納」
大塚 I様
design:Iさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gaku suzuki
確か最初はお電話を頂いていたのでした。
初めに受話器から聞こえた女性の声に、「おやっ、これは同じ業界の方だろうか。」と思わせるまとまりのある話しぶりで、どうやら比較的早い時期にキッチンの設置を希望されているということのようでした。
私はどちらかと言うとある程度の時間を掛けて、ひとつの物事を考えてゆきたいと常に願っております。
もともと、私たちのこの工場は、父の代では作家と言うよりも木工所と言う位置で仕事をしておりました。
1週間ごとに新しい形を作らなければいけなかったり、きゅうに仕事がぽっかり空いて暇を持て余してしまったり、何と言うか家具を作るというよりも、家具のようなものを作っているという日々でした。
インターネットと言うものが普及して、何度か申し上げておりますが、ちょうど2000年に、我がフリーハンドイマイはおおいに暇を持て余していたのですね。
そこで、「よし、これはホームページを作るぞ。」と一念発起して取り掛かりましたら、これが家具製作に並ぶくらいに面白く、夢中で作っているうちに、「この家具屋はいいね。」なんて言ってくださる方々が増えてきたのでした。
折しも、店舗改装がどんどん行なわれていたはげしい消費の時代はだんだんと落ち着いてしまい、私たちはお店の家具作りから遠のいて、その代わりに徐々に永く使える良い家具を希望される方々とだんだんとお付き合いを深めていくようになったのです。
その頃から、急ぎ仕事はもうやるまい、と思っていたのでした。
何しろバタバタした仕事と言うのは、作り始めてからも変更が出てきたり、思いと結果が異なったり、良いことがあった思いではあまりないものでして。
まわりから見ると、「イマイさんは、ひとつの仕事に時間を掛けてしまって大変ですね。」と言われることもあるのですが、「ええ、まあ。」なんて、時にはお茶を濁すこともあるのですが、以降自分ではそんなふうには思っておらず、もちろん大変ではありますが、できあがりのその姿を求めて少しずつ進んでいくのが性に合っているのですね。
だから、時々「2週間のうちにこのお店の家具を作れますか。お代は金額を先に言ってくれればお支払しますので。」なんて問い合わせがきたりすると尻込みしてしまうのです。
Iさんの場合はもちろんそんなことはありませんでしたが、もともと予定していたキッチン屋さんとうまく進まずに私たちを見付けてくださったということだったような気がします。
もうすでに図面はできあがっていて、プラン自体はその形で進めて、あとは素材などをどのようなものにという状況でした。
私自身、過去にそのように設計事務所さんや内装屋さんから降りてくるお店の家具の図面をもとに仕事をしていたことが多かったので、他人の図面を見て仕事をするのに慣れては折りましたが、好きではありませんでした。
自分が思う部分に必要な板が無かったり、余分な情報が事細かに書かれていることもあったり。
だから最初にIさんからのご相談を頂いた時に、時間的にもかなり厳しかったし、形状もこの形のままで実現するのは、私たちにとっては難しかったので、お断りしようと思っていたのです。
でも、いろいろとお話を伺っていくうちに、このリフォームがなかなか特殊な進め方をしていることを教えて頂きました。
Iさんのお知り合いの設計士さんが内装の設計はすべて行なってあるのですが、現場監督さんを入れないで、監理はIさん自身が行なっているとのこと。Iさんは子育てのかたわらインテリア関係のお仕事をされているので、段取りはご存じなのだそうです。
でも、実際は細かい納まりまでは分からないこともあって、懇意にしている大工さんを頼って納まりを考えながら工事を進めているということでした。キッチンも他の業者さんのつても無いようでして、私たちの作りをとても気に入ってくださっているというお話を聞くと、もう断るに断れないのでした。
では、もう引受けよう。と決めてからは、かなりバタバタです。
Iさんから頂いていた図面をもとにこちらに一度来て頂いて、新たに図面を描き直して、約3週間の9月下旬。その形で進めることになりまして、すでに現場は工事が進んでいるとのことで、最初にお話し頂いてから1か月後の10月初めには現場を見に行くことに。
そして、現場についてみると、もう少し工事の初期の段階化と思ったら、もうだいぶ大工さんの作業が進んでいたのでした・・。
この頃、11月末頃まですでに予定が埋まりつつありましたので、皆さんの家具製作のスケジュールをどうにか調整して、大工さんにもギリギリまで設置工事の時期を後ろに延ばしてもらって、どうにか進めることに。
今回ご依頼頂いていたのは、キッチンとその背面の食器棚と洗面台。キッチンと背面収納は、設備屋さんなどの各業者さんと関わってくるので、とりあえず先行して作業しなければいけない。
洗面台はどうにも間に合わないからあとだね。
そうして、慌ただしくはじまったIさんのお仕事ですが、この大塚と言う町はとても良いところで、どことなく下町の風情が残った柔らかい空気の街というのでしょうか、私の祖母の家が以前はここから程なくの距離に有りましたこともあって、気持ちは慌ただしくしていても、このあたりの空気を嗅ぐと、どことなく懐かしく落ち着くのでした。
そして、Iさんのマンションから車で5分も走れば、以前にパーテーションや看板をつくったHさんのサロンがあったり、マントルピース型ののようなテレビボードを作らせて頂いたKさんのお宅があったり、さらに少し車を走らせれば、もっと古くからのお付き合いのある机を作らせて頂いたSさんの家もあります。
だからね、何となく懐かしいのです。
Iさんと大工さんや電気屋さんとの打ち合わせを終えて、さっそくプランをまとめて作りはじめます。製作を担当したムラカミ君にはスケジュールをうまく合わせてもらって、取り急ぎ、大工さんの工事がほぼ終わるころに、キッチンと背面収納の本体だけを持ってくることができました。引き出しや扉はもう少し先で、まずは箱と天板だけを据え付けて、他の業者さんも作業ができるように進めます。
設備機器もセットして、あとはもう少し仕上げ工事が進んだ頃に、洗面台などを持ってきましょう。
と思っていたら、洗面台が入らない・・。
先日の打ち合わせで設置場所を確認していたのですが、洗面の出入り口を新しくするのにとの引き込み分、洗面台を置くスペースの出入り口が狭くなるのだそうです。
「えっ、もうできあがってしまったのに・・。」
現場監督さんが不在だとこういうことも起きてしまうのですね・・。
このままでは納まらないので、急きょ扉部分と引き出し部分を分割させることに。一つの大きな箱になっていて入らない場所でも、二つに分ければ入ります。スペースの中で二つを一つにくっつければよい。
そういうことでどうにか設置完了。
あっという間に過ぎていきましたが、これでIさんの工事は完了。
できあがったその場所は、Iさんらしくご自宅と言うよりはアトリエのよう。
奥には、ご主人の愛用する大きなデスクも置かれていてお仕事もできるようになっていて、お子さん(何と4人もいらっしゃってとても賑やか)もこの広々としたワンフロアを遊んで学んで楽しんで暮らすのです。
当のIさんも一番下のお子さんがまだまだ小さいうちはここが仕事場になるのでしょうし、暮らしを通じて仕事の魅力が増す良い住まいができあがったと思います。
ありがとうございました。
天板 | ステンレスヘアライン/ナラ板目無垢材 |
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扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体外側 | ナラ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装ツヤ消し仕上げ/オイル塗装「ナチュラル」 |
天板 | ナラ板目無垢材 |
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扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体外側 | ナラ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装ツヤ消し仕上げ |
天板 | 人工大理石 コーリアンモンタナフォーン |
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扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体外側 | ナラ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装ツヤ消し仕上げ |
ナラ板目材とステンレスヘアラインをのオーダーキッチンと背面収納
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