跡をのこす
「ナラ板目無垢材とステンレスバイブレーションとアイアンを使ったオーダーキッチン」
目黒 K様
design:Kさん
planning:daisuke imai
producer:gaku suzuki
painting:gaku suzuki
今まで私たちが良いと思っていたものは今でも良いと思われているのですが、これはまだ良くない、と言うものが良いと思われる時代がやってきました。
Kさんからの相談を頂いて、私は何か不思議に痛感しました。
そうか、時代は移ろうのだ。
節のないすっくと導管の通ったきれいな木目それが緩やかにのびやかに伸びていく様子が良い、とされていた木の表情も、時には、きれいすぎるという捉え方があるのでした。
いろいろなものが混沌として、その中から見つかる答えはたった一つだけではない時代になりました。
ただ、その人その人に合わせて家具を作ることができる、それが私たちの大きなメリットであり、デメリットでもあります。
Kさんと打ち合わせの重ねながら、この形で良いのか、と自分の基準と照らし合わせながら、このキッチンを作ったのであります。
「ポートランド」という言葉が昨今の流行りであります。
その実は、実際にポートランドを訪ね歩かないことには分かりませんが、私たちの耳元に入ってくる「ポートランド」と言う言葉は、住むところや働くところ、社会もコミュニティも自分たちの中で作りだし、きちんと自立した社会を送っている気持ちが豊かな暮らし、と言う印象を与えます。
自分たちで工夫をして暮らすこと、その手の跡が残る家、家具、町全体はそのすべてがきれいこざっぱりした印象ではないのですが、表情豊かで生き生き映ります。
少し前までは、透明感のある「ノルディック」と言う言葉をよく聞きましたが、今はこの「ポートランド」という言葉をよく耳にしたり、その表情豊かな様子を取り入れたお店を近所でも見かけるようになりました。
Kさんもまたそういう表情の新居を実現すべく、私たちのもとを訪ねてくださいました。
当初、私はそのキッチンの印象をもう少しきれいなもの(語彙が貧しくてすみません。)と考えておりました。
節のある表情を取り入れた家具と言うのは、だんだんとスタンダードなものになってきてはいましたので、そういう節のある表情を持ったオークとステンレスを組み合わせたモダンなキッチン、を考えておりました。
「イマイさん、私のイメージはもう少しこう、何というかラフな感じなんです。」
と言って見せてくださったのは、とある都内のカフェのカウンター。
なるほど、今はこういう仕上げが流行りなのか・・。
「それで、ノコギリの後とか溶接の後とか、傷がたくさんついていたり、そういう感じにしたいんです。」
これは、なかなか難しいオーダーです。
荒々しいまま見せるのは簡単そうに見えても、私たちにとっては反対に難しいのでした。
ボコボコしたまま板を接ぎ合わせることはできないし、精度も出せない。
鉄も黒皮と言う酸化防止の処理のままだけで作ってしまうとどうなるのだろう・・。それに溶接部分を磨くと黒皮が落ちて地金の鈍い銀色が出てきてしまう。
素材の印象を大事にしたくても、そのままで仕上げたら、いったいどのくらいこのキッチンは機能してくれるのだろう・・、5年、10年、それとも20年以上・・。
今はまだ私よりもうんと若いKさんにとってこのキッチンをいつまでも愛し続けることができるのかな。
そういうことが初めての試みにはつきもので、なかなか踏み出せずに慎重に作った形がこのキッチンなのです。
できあがったその形は、とても表情豊かなキッチンとなり、そのKさんのお部屋の雰囲気にはとても良く合う形となりました。
Kさんにも大変喜んで頂くことができたので、なにぶん初めてのことが多かったので、その言葉を頂いて、ようやくホッと胸をなでおろしたのでした。
天板 | ステンレスバイブレーション |
---|---|
扉・前板 | ナラ節アリ無垢材 |
本体外側 | ナラ節アリ無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「指定色」 |
天板 | ステンレスバイブレーション |
---|---|
扉・前板 | ナラ節アリ無垢材 |
本体外側 | ナラ節アリ無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「指定色」 |
ナラ板目無垢材とステンレスバイブレーションとアイアンを使ったオーダーキッチン
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。