少しずつふえていく
「クルミのL型食器棚のオーダー」
白楽 K様
design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:kouhei kobayashi
前回、DENのスペースに壁2面を使ってL型の本棚を作らせて頂いたのが、もう3年も前のことです。あのあとも時々温かいお便りを頂いたり、Kさんのご住所の近くの方から家具を依頼することがある時はKさんのことを思い返していたりと、どこかでそっと私たちを見てくれているような気がしていたのです。
そして先日、「イマイさん、実は私結婚することになりましてね。」とメールを頂いたのです。
「いやあ独身生活が長かったから、今までは小さな食器棚で済んでいたのですが、妻からきちんとしたものを用意したいって言われてしまいまして。だけれども、うちのキッチンはなかなか狭くて間取りが変わっているから、市販の食器棚だとうまくいかなそうで。それなら、イマイさんにって思ってまたご連絡させて頂いたのです。」と、とてもうれしそうにお話ししてくださいました。
久しぶりに本棚の様子も見ておきたかったこともあって、まずはいろいろとメールでやり取りするよりもお伺いすることにしました。久しぶりにお会いするKさん、お変わりなくお元気そうで、そしてうれしそう。この時はタイミングが合わず奥様にはお会いすることができませんでしたが、何となくKさんの笑顔を見ていると新婚生活が分かります。(笑)
それで、さっそくキッチンを見せて頂くと、なるほどキッチンから洗面室に入れるように引戸がついているのでした。ここが壁ならきっと大きな食器棚が置けるのに、小さなスペースしかないから市販の食器棚で対応しても二人暮らしには足りないかもしれません。
「もともと、食器などはそれほど多くないのですが、二人分のものが揃ってくると、だんだんと手狭になってきてしまいまして・・。」とニコニコ。
それなら、思いきって本棚のほうにL型の食器棚にするのはいかがでしょう。
お話の中でそんなアイデアが生まれました。
メインの収納部分はキッチンの反対面に作って、洗面室の引戸のほうには、小さな度棚やゴミ箱のスペースを作って・・。正面の戸棚にはお酒やお茶が好きなKさんがカップなどを置けるような戸棚があっても良いかもしれません。そして、そこがガラスの引き戸のような印象なら、以前に作らせて頂いたこちらのお客様のような感じがありますよ。
「あっ、この形。早々いいですよね。こっちもいいなあ。」
と、いろいろと私たちの家具をご存知なKさん。
以前に「私はイマイさんのファンなんです。」といってくださったのを思い出しました。
うれしいです。こんなに年を取ってから、ファンになってくれる方ができるなんて思ってもいませんでしたからね。
そのような感じで、懐かしく、楽しい時間を過ごさせて頂いたのでした。
それから、プランを練り直して、お二人で私たちの工房にも来て頂いて、(奥様はじめまして!)あらためて細かい部分について打ち合わせさせて頂き、素材も打ち合わせで使っている少しラフなクルミの印象を気に入って頂いて、本棚で使ったチェリーではなくクルミで作らせて頂くことが決まって、ようやく食器棚の形がまとまりました。
今までも何度か書かせて頂きましたが、私たちの作る家具ができあがる時間というのは、作るよりも使い方を考えて形をまとめるまでのほうが時間が掛かります。もちろんすんなりとプランが決まってしまうこともあるのですが、皆さんとお話しして、何か必要か、私たちに何ができるのかそれを時間を掛けて考えてゆくのです。
そういう考える時間、そしてそれが作られていくまでの時間、そして使い初めてから使い続けていく時間。ずっと私たちと皆さんとの関わりは続いていくのです。
だからって、年中その人にベタベタとくっついているわけではなくて、何かどこかで、フリーハンドイマイの空気的なものを感じ取ってもらえたらよいなと思いながら家具を作っています。
だから、故障があったり、使い方を変えてみたくなったり、家具を移動したくなったり、新しい家具がほしくなったりした時に、あっそうだイマイさんが居たっけ、というふうに思ってもらえたらうれしいのです。
今回のKさんの食器棚にもそのような私たちの思いともちろんKさんの大きな思いを詰めることができました。
シンプルだけれど、Kさんらしい食器棚になって、Kさんと奥様がとてもうれしそう。
少しずつ増えていくフリーハンドイマイ的な空気。うれしい場所です。
それでは、お幸せに。
クルミのL型食器棚
価格:660,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は18,000円から、取付施工費は40,000円から)