縫う
「ナラ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」
立川 K様
design: Kさん
planning: daisuke imai
producer: gaku suzuki
painting: gaku suzuki
Kさんから最初にご相談をご相談を頂いたのは、このキッチンを作らせて頂く、2、3年ほど前だったでしょうか・・・。
キッチンのリフォームのご相談を頂いていたのですが、その頃の私たちは力不足で、リフォームに関わる内装工事についてどのように提案したら良いか分からない部分があったりして、なかなかこれといった答えを出せずにいたのでした。
Kさんもいろいろとお話をするうちにそんなに急いでは考えていらっしゃらないようで、ゆったりとしたペースでどうするべきかお話が進んでいったのでした。
その後、キッチンのリフォームはひとまず置いておいて、今度は今お使いの高さ180㎝くらいの食器棚(結婚のときにお祝いで頂いた食器棚)を、今のキッチンスペースに上下に分割吊戸棚と下のカウンターとに分けて使うことはできますか、というご相談に変わってしまったので、どうやら、キッチンのリフォームはなくなったのかな、と思っていたのです。
その食器棚も写真を見せて頂くと一般的な置き家具でしたので、いろいろと手を加えないと吊るのが難しいことが分かり、ひとまず検討しますということに。
それからしばらくして、うれしいことにKさんに赤ちゃんが生まれることになりまして、またしばらく時間を開けることになりました。
とてものんびりですね、そういえば・・、と思うときにポツッとメールを頂いたり、送ったり・・。
そうして、最初のご相談から2年ほど経ったころに、「お久しぶりです、イマイさん。」とメールを頂いたのでした。
そのメールの内容を読ませて頂くと、「ようやくキッチンのリフォームをすることに決めました。」というものでした。それで、今までの感じから私たちの家具の様子やコストのお話も分かっていましたので、Kさんは細かいご相談をするためにこちらまでいらして下さったのでした。
実際にお会いしてみると、のんびりした様子などまるでないくらい、ハキハキとした女性だったのでした。あとでよくお話を伺うと学校の先生だったのです。
そこで、どんな素材でどういうふうなキッチンが好きか、いろんなお話を聞かせてくださいました。ただ、今回は新しく作るのではなく、リフォームです。私たちの力だけでは難しそうです。
難しい部分はこうでした。
既存のキッチンと吊戸棚を取り払うことで、解体した壁をどう仕上げるか、今まで独立したキッチンというスペースを、リビングと一体につなげるためにどういうふうにアイランドキッチンを据えるか、既存の床と新しい床との取り合いをどうするか、もともとついている食器棚をどう生かすか・・。
私たちだけでは難しそうです。
そこで、以前よりいろいろとご相談に乗って頂いて良くしてもらっていたピーズサプライさんに内装工事について相談させて頂いたのでした。
ピーズさんとは、以前、「イエ作り」の横浜のOさんのキッチンを作らせて頂いた時に、ご挨拶させて頂いた、施工も行う設計事務所さんなのでした。
そして、家を作るだけではなく、オリジナルのオーダーキッチンも作っているところでもありましたので、どちらかというと、お互い競い合う立場にあったのかもしれませんが、社長である井上さんやスタッフの皆さんの人柄に魅かれて、あれからずっととても良くしてもらっていたのでした。
「ようやく、イマイさんと一緒にお仕事ができますね。」
今回Kさんの工事を担当して頂く末森さんからそう言われた時は、何だかとてもうれしかったのです。
そして、末森さんを交えて内装も含めた打合せにお伺いします。
やはり家作りからキッチンの製作までトータルでされているだけあって、提案がとても豊富で、隣で話を聞いているだけでとても勉強になりました。
やはり女性から見るキッチンの視点は違うよなあ、とフンフン感心して聞き入っていたのでした。
そして、その打ち合わせの時にKさんが今回のリフォームを思い立ったきっかけもお話ししてくださいました。
「実は、リフォームを決めた要因は何かと言いますと、このコンロの調子がだんだんとおかしくなってきたからなのです。コンロだけ新しくするくらいなら思い切ってキッチンもリフォームしてしまおう、って思ったのです。このマンションも私たちは途中で越してきたので、前に住まわれていた方がこの食器棚を作ってもらったようで、少し古い作りだから、扉ばかりで使いにくい部分もあるのです。そういうようなことを考えていたら、思い切って自分好みのキッチンにしようと決めてしまったのです。」
なるほど。今までいろいろと考えていたけれど踏み出すきっかけって、とても小さなことからはじまるのかもしれないです。
Kさんのお庭で採れたとても甘いブルーベリーを頂きながら、そんなことを考えておりました。
これで、どういうキッチンにするか、室内のどのあたりまで解体するかなどがすべて決まりました。
「今回は私たちの仕事は、それほど大掛かりではなくのでイマイさんのキッチン製作のスケジュールに合わせて、リフォームの予定を立てましょう。」と末森さん。
最終的には、学校が夏休みに入る時期を利用してリフォームの段取りを考えていくことにして、8月のお盆前に工事をすることになったのでした。
キッチン自体はいつものオーソドックスなスタイルから少しプランを変えただけですので、順調に製作は進みます。一つ心配だったのは、今回組み込む食器洗浄機がスウェーデンのASKO。海外製のフロントオープンタイプの食器洗浄機は同じような方法で施工が行えるのですが、高さがいつもよりも高いのできちんと納まるかがちょっと心配だったのでした。それから、食器棚のほうは、既存の食器棚の本体を生かして、表面だけキッチンに合わせて新しくして、部分的に収納を追加して、という方法になりまして、うまく既存の食器棚に合わせるところをうまくしないといけない、ということでちょっと不安があったのでした。
そうして、8月。いよいよ工事です。1週間から10日ほどの期間で工事をする予定です。
工事初日は、ピーズさんが解体工事を行います。表面を取り換える食器棚を預かって工場で加工することにしたので、私たちも解体に参加して、食器棚を預かります。今回はキッチンだけのリフォームなので、午前中には解体が終わり、キッチンとリビングがひとつのスペースにつながりました。何となくイメージが形になりはじめます。
そして、大工さんが新たに壁を造作し終わった4日後、出来上がっているキッチンと食器棚を運び込みます。食器棚もキッチンも順調にどちらも無事きれいに納まりました。
ちょっと心配だったキッチン側面のコンセントなども問題なく設置できそうです。ちょっと手こずったのは、やはり食器洗浄機でした。設置可能寸法に合わせてキッチンを考えたのですが、なぜか5㎜ほど高さに余裕がなくなってしまって、解体した時に既存の床が一部なかったままにしておいたことが幸いして無事設置完了。また今回のこの食器洗浄機は、取っ手などがない前面パネル仕上げだったのも初めての経験。
とても良い具合に納まりました。
「わぁ、まるでスタジオみたい。」キッチンを照らすスポットの明かりを見て、Kさんがにこやかにそう言います。
「これから、ここでいろいろ頑張らなくちゃ。」
服飾学校の先生であるKさん。打合せの最中に、古い古い刺繍台を見せてくださいました。
「私は、こういうふうに縫製することを教えているのです。」と。
糸を縫うことで一枚の布ができていくのですね。
暮らしもそうであります。
ひとつひとつのその人の動作やしぐさが習慣となり、その場所での暮らしをかたち作っていくのですね。
これから大きくなっていくお子さんとご主人と一緒にどんなきれいな布ができあがるのか、その時を楽しみにしています。
天板 | ステンレスヘアライン |
---|---|
扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体外側 | ナラ板目突板練り付け/ナラ板目無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」 |
天板 | ナラ板目無垢材 |
---|---|
扉・前板 | ナラ板目突板練り付け |
本体 | 既存を利用 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」 |
ナラとステンレスのキッチンと食器棚の扉・天板交換一式
価格:1,230,000円(制作費・塗装費、設備機器は別途)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は110,000円から)
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