ストーリーテラー
「クルミ板目材とセラミックストーンのオーダーキッチン」
町田 D様
design:Dさん/daisuke imai
planning:Dさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami
住宅のフリーペーパーに私たちのキッチンが掲載されていたそうです。
それを見たDさん、今度はPinterestに私たちのキッチンの画像が掲載されていたとのことで、それを見てメールをくださいました。
いろいろなところで、すこしずつ取り上げてくださいまして大変感謝しております。
神奈川のほぼ中央のある町なのに、市ではなく郡でいて単線が走るこののどかな町にある小さな木工所をこうして知ってくださることに大変感謝しております。
Dさんはキッチンに対していろいろな思いがあって、それをメールで書いてくださったのです。
「以前、カタログを送っていただきました、Dと申します。このたび工務店との打ち合わせでいよいよキッチンを決めなければいけない段階に入り、色々ショールームも見たのですがなかなか気に入ったものが見つからず・・。
ずっと気になっていたイマイ様にご連絡させていただきました。
ウッドワンのKUROMUKUという製品がとても気に入ったのですが、収納部分が全く隠れないのでKUROMUKUのような表情のキッチンで、かつ収納力もあるアイランドのキッチンにしたいなあと思っています。
制作例でいうと、「跡をのこす」や、「豊かな色」が好みに近いです。木の中に黒が効いているという感じです。リビングの顔、というイメージでは、「ステージ」も好きです。
リビングはオークの無垢板張りにする予定なので、キッチンも合わせてオークがいいと思っています。また、この予算で可能なのか心配ですが、キッチンの天板はセラミックタイルがいいなあと思っています。キッチンの仕組みはザっとですが、シンク下はタオルバーとごみ箱の空間を空け、右隣に海外製食洗器、コンロの下のスライドワイヤーシェルフ2段、コンロ脇は調味料入れ2段、包丁入れ…という感じです。キッチンリビング側正面は、「豊かな色」のような感じで、両脇収納真ん中がグレーの棚になっているのが素敵だなあと思っています。(わかりづらくて申し訳ありません。スケッチしたのですが、プリンターとパソコンの調子が悪く、読み取れませんでした。)」
なるほど、最近はすこし色褪せたような、どこか素材の印象がむき出しのような仕上げを好まれる方が増えてきました。
Dさんが挙げてくださった方々のキッチンは、どちらかというと今までは仕上げとしてはイレギュラーな形の納め方をしている方々ばかりです。
そういう形がより生き生きと見える、素材の表情がそのまま感じられる物の良さ、物を作ることで生まれる手の跡、足跡、のようなものが評価されるものの見方が浸透してきたのですね。
この流れとともに物を作り出すことの良さがより見直されて、生み出すことの素晴らしさをもっと実感できる社会になったらよいなと思うのですが、既に必要なものが出揃っているように感じられる今の暮らしでは、なかなか新たなものを作ることに夢を抱くことは少し難しいのかもしれない、とも思えて、淋しい側面も感じられるのです。
しかし、こういう考え方が広まっていくことはとてもうれしいことです。
そして、今回初めて使おうとしているセラミック。ちょうどこのところテレビのコマーシャルでも取りあげられていました。熱いものをそのまま直に置いたり、鋭いものが当たっても傷にならない素材。
ふーん、そのような素材があるんだなあ。とその時は何気なく思っていたのですが、これだったのですね。
そういえば、「豊かな色」のGさんがキッチンのご要望を伝えてくださった時に「表面がまるで石そのままのようにボコボコしているカウンターが良いのです。」と言っていたのが、当時はセラミックだなんて気が付かなくて、「さっぱりさん」のMさんのお宅にお邪魔した時に見たボコボコしたカウンターを見て、これがセラミックなのかあって、初めて新しことを覚える小学生のような気分で天板を触らせてもらったことを思い出しました。
そのセラミックを使わせてもらえることにちょっとドキドキしながら、どんな形でキッチンをまとめていこうかと、楽しみに思ったのでした。
そこで調べてみると、セラミックにもいくつかのメーカーがあってあれこれと特長を比べてみると、本当に傷がつかないもの(磁器なのかな)や尖ったシャープペンシルで引っかくと白く筋がついてしまうもの(陶器なのかな)やいろいろあるようです。
その中でよさそうに思えるデクトンを使うことにしたのです。
ところで、Dさん。キッチンのスタイルからはちょっとかけ離れたイメージに見える可愛らしい方で、確か国語の先生をなさっています。
ちょうどこの時期に私自身が長女の通う中学校で役員を務めていたこともあって、キッチンや家具のお話以外でも何かとすてきなお話を聞かせて頂いて大変楽しい時間を過ごさせて頂いたのを覚えております。
ちょうど新一年生に向けてどんな話をしようかと思いめぐらせていた時に、私はミヒャエルエンデのお話がずっと好きだったのを思い出して、「モモ」の話のなかに出てくる時間泥棒の様子が虚ろで怖かったなあという気持を子供時分からいまだに漠然とした覚えていて。
それは時間泥棒自身が怖いのではなく、彼らが言う言葉が全く正当に思えてしまって、それに取り込まれてしまう人たちの様子が鵜すら怖かったのを覚えております。
そんなことをDさんにお伝えすると、「ミヒャエルエンデのモモ、良いですよね。「時間」をキーワードにした物語ではありますが、ミヒャエルエンデの物語はどの話も、「既成概念からの脱却」を主軸としているような気もします。その人にはその人の人生があって、周りの人には分からないかもしれないけれど、その人にはとても意味のある、価値のある時間の使い方で、その人の身になっているし、なっていく。自分と他人との違いを認めて、違いを大切にしろ・・・と言われているような、そんな感じがします。世間で言われているところの、大切さとか、重要さとかは置いておいて。」
おお、すばらしきストーリーテラー。
こういうすてきなご意見をくださったり。
「違いを大切にしろ」って大事なことです。
そして、家具作りの中でこういうお話ができることってとてもすてきなこと。ありがたいことだと、日々うれしくなるのです。
こうして、有意義な打ち合わせが進んでひとつの形がまとまりました。
大きな四角のなかに構成された小さな四角たち。それがほんのり浮いて見えるような印象で、この形ができあがりました。
「お世話になっております。
イマイさん、本当にすてきなキッチンをありがとうございました。キッチンの取り付けが楽しみで楽しみで、毎日のように現場に行っては想像を膨らませていたので、想像以上のものが置かれていて大興奮でした。何度も打ち合わせに伺わせていただき、その度にプランを変更し、たくさんご迷惑をおかしてしまいました。お付き合いくださり、本当にありがとうございました。」
いえ、こちらこそ、この家具ができあがるまでのとても有意義な時間は私を豊かにしてくれました。
ありがとうございました。
天板 | セラミックストーン「デクトン」 |
---|---|
扉・前板 | クルミ板目無垢材/クルミ板目突板 |
本体外側 | クルミ板目突板 |
本体内側 | カラーフィットポリ化粧板「グレー」 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
セラミックストーンとクルミのキッチン
価格:1,600,000円(制作費・塗装費、設備機器は別途)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は120,000円から)