家族でつくる家
「チェリー板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」
逗子 S様
design:Sさん
planning:daisuke imai
producer:hiroyuki kai
painting:hiroyuki kai
「まず、3月31日土曜日の午前中に見学に伺うことは可能でしょうか?
急なお願いで申し訳ありませんがお返事お待ちしております。
オーダーキッチングランプリのお写真からこちらのウェブサイトにたどり着きました。
現在新居の間取りを検討を始めたばかりで、11月中に引っ越しまでしたいと考えています。キッチンが中心になりそうなので、広いリビング側に向けてのアイランドキッチンにしたいと考えています。
キッチンの要望は以下のとおりです。
・料理教室がしたい(準備中)
・玄米味噌汁、地産地消の教室
・外国人向け和食家庭料理教室
・アイランドキッチン、Ⅱ型キッチン
・食洗機を導入したい
・ダイニング側から取り出せるようにしたい(カトラリー、ランチョンマット、コップ、湯のみ、ワイングラス)
・まな板、ふきんがダイニング側から見えないように、干したい
・天板はステンレスにしたい
よろしくお願いします。」
Sさんからメールを頂きました。
まずはこちらにいらしてくださるということで、その時にいろいろとお話をお聞きしながら形を考えてみましょう。
ということで、約束の日に奥様がお一人でいらしてくださいました。
あれっ、ご主人も一緒にいらしてくださるのかと思っておりました。
と、「主人は後から来るそうなので、さきに私のほうでお話を進めておこうと思いまして。」ということでさっそくいろいろとお話させて頂きました。
私たちの工房ではどのような感じでキッチンを作っているか、どういう素材を使うことが多いか、どんな機器を組み込めるのか、そういった選択肢というか可能性のようなものをいろいろとお伝えして、その中からその人が何を望んでいるのかを教えて頂く、そういう形で打ち合わせを進めていきます。
で、Sさんのイメージをおおよそお伺いしたところで、ご主人登場。
頭にサングラスをかけて、レーパンを履いていて、自転車でお出掛けされていたとのこと。
わぁ、すてきなだあ。私も今は通勤以外で自転車に乗ることがめっきり少なくなってしまいましたが、10年くらい前は気持ちがどこかに飛んでしまったのかと思われるくらいに、所沢や練馬、上野、小田原あたりまではしょっちゅう自転車で打ち合わせに出かけていました。
お客様の家でシャツを着替えさせてもらったこともあるくらい、変わった人に映っていたことと思います。
ですので、どんなところに出かけられていたのかなどいろいろとお話をお聞きしたかったのですが、その時のご主人とてもストイックなのか、ご機嫌斜めなのか、なかなか近寄りづらい印象でございまして・・(笑)
ご主人がいらっしゃってからも引き続き奥様と打ち合わせを続けたのですが、「それは今伝えなくても良いことじゃないか。」とか「それは君に任せる。」というような感じで、少し奥様の思いが伝わってきづらくなってしまったのでした。
うーん、ちょっと困ったなあ。と思っていたところで、ご主人が先に戻られるということで先にここを出ることに。
うーん、静かな嵐のような方だ・・。
「すみません、お話がはかどらなくて。」と奥様。この頃にはおおよその方向はまとまっていたので、大丈夫ですよ、良い形を考えてみますね。
さっそく頂いたご要望に合わせてスケッチをまとめてどのくらいの制作費用が掛かるかを考えてみて、お伝えしました。
どうにかお願いできそうということで、さっそく図面を描いてみて細かい部分について打ち合わせを重ねていきます。
その中でひとつ興味深いお話がありました。
お料理をするにあたって、パン生地をこねたりするのにこね台を使わないで、ワークトップを消毒してそのままそこでこねることができるようにもしたい、という考えがあるそうで、そうする時にパン生地にステンレス粉が混じりあってしまうのだそうです。
なるほど、そういうことも考えられますね。
ということでさっそく板金屋さんに相談です。
聴いてみるとバイブレーション仕上げに限っては研磨粉が板の内部に残ってしまうことがあるそうで、その場合に特殊洗浄して納品することもできますよ、というお返事。
なるほど良い勉強になります。
でも、ヘアラインだと研磨ラインが単純なので、複雑な洗浄をしなくても除去できるということで今回は普通の仕上がりで進めることに。
その後、金額を調整しながら手間を省ける部分と手間をかける部分のバランスを考えながら形を決めていきまして、ようやくご新居の着工上棟です。
そして、いよいよ現地での打ち合わせ。
場所を調べていくと、Sさんのご新居が経つ現場から車で10分くらいの距離には10年近く前からつい最近まで数えると5件ほど以前に家具を作らせて頂いたお客様が多いことが分かりました。
みんながどこかでつながったらおもしろいなあ。
細い道を通り抜けると、大きな敷地を4つに分けた分譲地に辿り着きました。その一つがSさんの家です。
「こんにちは、お久しぶりです。」
とSさんと、その後ろからご主人が。
あれっ、ご主人の印象が前回と違う・・。
「よろしくお願い致します。」
とても物静かで優しそうな印象だったのでした。
人があらわす印象も人が受け取る印象もはかなく移ろいやすいものです。(笑)
とても温かな家になりそうな予感を抱いて打ち合わせに現地へと向かいます。
現地に辿り着くと、だいぶ現場の作業が進んでいます。キッチン設置日が早まったかな・・。
聞くと予定通りの日程で大丈夫ということでしたが、今回は無垢材を多く使うし、この冬の乾燥した時期でもあり、年を越して間もなくの納品というスケジュールでした、早めに材の段取りをしておきたい。
現場で打ち合わせを終えた翌日から、さっそく段取りを始めさせて頂きました。
そうして、無事に年を越すことができまして、予定通りにキッチンの設置が完了。
あとは内装の仕上げ、機器の配管工事が終われば引渡しで、引き渡し当日に立ち会わせて頂きましたが、私たちのキッチンってそれほど複雑な形をしていないものですから、あまり説明することがなくて、その時もメインは家の引渡しでしたので、あまりお邪魔になってはいけないと思いまして、ひと通り簡単なご説明をしましてお暇させて頂きまして、後日お伺いすることにしたのでした。
そう、キッチンや家具って使い始めてからのほうが分かるんです。だんだんと自分の手になじんでくる、というか。
だから、暮らし始めてからお話をお聞きするほうがよいのです。
というわけで、お引渡しから3か月後にあらためてお邪魔させて頂いたのでした。
へぇ、これは。
Sさんのイメージってもっと違う印象を持っておりました。
外人さん向けのお料理教室となると海外のインテリアを参考にされた空間になっているのではないかと。
とても心地よい濃茶でした。
その中にチェリーのまだ色若いキッチンが。
ずっと使い続けてきたという円卓ともとても良い印象です。
「こういうインテリアになるとは・・。」
「ふふっ、ありがとうございます。」とうれしそうにお話しされる奥様。
きくと、このキッチン背面やリビング入り口に設けられた建具はご主人が作ったのだそう。
おぉ、すばらしい。
「これがね、間にアクリル(だったかな?ガラスだったかな?)を挟む形にしたから釘打ちにとても苦労していたんです。」とうれしそう。
どうやら自転車も自分で組むような道具類も整っていたし、ご主人も奥様もクラフトマンなんだ。
そう知ることができた途端に、やっぱりもっとご主人とお話がしたいなあ、そう思ったのでした。
お料理教室開かれたら、ぜひ遊びに行きますね。
天板 | ステンレスバイブレーション |
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扉・前板 | チェリー無垢材 |
本体外側 | チェリー板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | オイル塗装仕上げ/ウレタンクリア塗装仕上げ |
チェリーとステンレスバイブレーションのアイランドキッチン
価格:1,220,000円(制作費・塗装費、設備機器費用は別)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は130,000円から)