バックヤード
「オーダーシューズ用作業台、皮切り台のオーダー」
横浜 ハドソンズ様
design:プラスマイズミアーキテクトさん/Mさん/daisuke imai
planning:プラスマイズミアーキテクトさん/daisuke imai
producer:yasukazu kanai/iku nogami
painting:yasukazu kanai/iku nogami
横浜に「ハドソン靴店」さんという路面から眺めるその店の様子がとてもすてきな靴屋さんがあります。
ガラス越しに見える靴の材料や道具に圧倒されそうなくらい魅力的なお店ですが、そのお店以上に不思議な魅力の店主であるMさん。
ご縁があって、以前大磯のKさんの「姉妹で作る家」のキッチンを任せて頂いた時、そのKさんの妹さんがKさんの家を設計して、その妹さんの一緒に設計事務所を営んでいるご主人であるマイズミさんとそこで知り合うことができまして、そのKさんのキッチンの印象をとても良く思ってくださっていたマイズミさんがハドソンさんのサロンを作られまして、そこに置く家具たちのプロデュースも行なうことになったのだそうです。
その時に、私たちのことを思い出してくださって声を掛けて頂いたのでした。
「イマイさんが作られたあのキッチンの表情がね、とても素敵だなってずっと思っていたのです。」
「イマイさん、ちょっと変わったお仕事なのですが、ぜひイマイさんにお手伝い頂きたくて。実は靴屋さんのワークデスクを考えているんですよ。」
靴屋さん?
聞くとオーダーでシューズを作っていらっしゃったり、難しい靴の修理をお仕事にされている工房に机などを作りたいのだということでした。
興味深い依頼ですが、その職の専用の道具となると、自分たちの力で実現できるのかな、ちょっと不安もありました。
まずはマイズミさんにお話をお伺いして、そのサロンを拝見させて頂きました。
「こんにちは、はじめまして。イマイと申します。」
まずは路面店に立ち寄らせて頂きます。
それが冒頭の印象。靴の存在感に圧倒されるような店構えで、お店というよりはもう工房ですね。店先に入ってもあまり寛げる場所がなくって、革の匂いが漂う作業場です。
「はじめまして。」
と、笑顔で迎えてくれた店主のMさん。細身でとても物腰の穏やかで、おそらく私よりもお若い。イメージしていた手がごつごつしていて、髭を三つ編みしているような思い描いていた靴職人さんとは違うのでした。
「じゃあ、サロンのほうへご案内します。」
と支度が残っているMさんよりも先にマイズミさんと私とでそちらに向かうことに。
工房から5分くらいと見えてくる車どおりの少ない場所に立つ古い集合住宅。
この一室をリノベーションしたというサロンは、「お邪魔します。」「ちょっと待ってくださいね、今電気付けますので。」と言ってブレーカーを上げて照明をつけても部屋の奥まで見渡せないようなとても雰囲気のある照度の室内。
躯体がむき出しの壁や床に素材をのそのまま見せたような間仕切壁が立ち、モールテックスを塗ったのです、と言っていた白いステージが応接スペースになっている独特の空間でMさんとマイズミさんの個性全開な感じです。
「ここにいくつか作りたいものを考えているのです。」
「どちらかというとお客様に見せる家具ではなく、バックヤードで使う家具なのですが、それをとても印象強く作りたいのです。」
なるほど。
マイズミさんのイメージは、こうでした。
空間と同じく素材そのままを見せられるような家具にしたくて、さらにはワークデスクとしての耐久性もきちんと考えられた形。そのほかにステージで使う音響機器をディスプレイしながらも家具自身がきれいに見える形になるようなオーディオラックも作りたい、ということでした。
うーん、とても抽象的だ。
Mさんの要望はどうなのかな、と思って、あとからいらっしゃったMさんにお話を聞くと、「素材の良さがきちんと表現されている形がすてきですよね。」ともっと抽象的だ。
私は作家ではないので掴みどころが難しいと形を考えるのにとても困ってしまうものでして、どちらかというとご要望という名前のいろいろな条件をクリアしながら形を作っていくことに慣れているので、頭を悩ませておりますと、「大まかなイメージは思い描いているものがありますので、それをMさんと詰めていってイマイさんに提示できるようにしますので。まずはこの場所を見てどんな感じがをつかんで頂けたらと思っておりまして。」とマイズミさんがフォロー。
そうですね、とひと安心。
ここから、マイズミさんの思い描く大まかなイメージをメインに肉付けを重ねて具体的に実現できる形へと考えていったのでした。
素材をそのまま表現することはただシンプルになることではなく、形として成り立つ質素さで素材の良い表情もうまく出せたらよいなという話になりました。また、古いビルのような集合住宅でエレベーターもなく、半ば閉じられた階段しかなく、古いてっいを開けると少し入り組んだ設計の空間ですので、搬入がかなり難しいため、そのこじんまりした空間に搬入できる方法と現地で組み立てられる方法を模索しながら、どこまで装飾をそぎ落とすことが良いのか、3人で悩みながら形はできあがったのでした。
こうして、なかなか知ることのない世界を見聞きできてとても貴重なお仕事をさせて頂くことができたのでした。実はまだこれでサロンが完成したわけではないようでして、また存在感のある形が必要になったらお声掛けしますね、とお二人にそう言われてしまったのでした。
大変ありがたいお声掛けで、頭を悩ませながら頑張りたいと思います。
「今まで修理をメインに行なってきた部分があるのですが、ここでは自分の表現できる靴を作り上げていきたいと考えているのです。今考えているのは、ロード・・。」
面白い仕事が広がっていきそうで、私の楽しみにしています。
お二方、このたびはありがとうございました。
オーダーシューズ用作業台、皮切り台
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