印象を整える

「ナラ板目のキッチンカウンター収納のオーダー」

横浜 M様

design:Mさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:kenta watanabe
painting:kenta watanabe

すべてをゼロから作るオーダーキッチンとは違った形で木のキッチンを実現する方法もあります。
キッチンを考える方法として、使い勝手の良いシンプルな印象のシステムキッチンを採用してコストを抑え、そのキッチンを囲うように家具で作り込んでいくとなかなかシステムキッチンでは実現しづらい木のキッチンの印象に仕上げることができるのです。
今までも何度かこのような形でキッチンを彩ってきました。
響く声」八王子のYさん
整えて」大倉山のTさん
あたらしい形」港北のHさん
ロックなあなた」の横浜のNさん
おとうさん」の茅ケ崎のWさん
どのお客様もがらりと印象が変わったのでしたね。

今回のMさんもこの方法で家具を作らせて頂きました。
今までと少し違ったのは、全てが完成された場所に合わせて作るのではなく、新築工事の中で工務店さんのご協力を頂きながら作り上げたことでした。

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Mさんから頂いた原案。

Mさんから頂いたメール
「自宅新築にあたりキッチンカウンター収納を探しています。
施工例「ラフラフ」「おばさま」がイメージとぴったりです。上部はオープン収納・下部中央にA4の入る本棚、樹種は明るすぎず暗すぎない(オーク・タモ・クルミでしょうか?)ものを考えています。仕上げは突板を希望しますがあまり詳しくなく、オイル仕上げとその他塗装仕上げの違いを教えていただけたらと思います。
なお、着工11月で引渡し3月の予定です。
よろしくお願いいたします。」

ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

リビングから見た印象。この水平と垂直のラインがきちんと出た印象は美しいです。右のほうが天板を支えるために入れた幕板がどのように見えるか実際施工してみないと分からなかった部分ですが、存在感がにぎやかになることなく落ち着いてまとまってくれてうれしいです。

それから、詳しいお話をお伺いすると、キッチンの手元を隠すように腰壁が立ちあがってその上に対面カウンターが載るのですが、このカウンターも私たちのほうで作ってほしいというお話だったのです。
今まではカウンターはハウスメーカーさんのほうですでに施工されている状態のところに家具をはめ込むように作ることが多かったのですが、ここ最近は、今回のようにカウンターから作る機会も増えてきました。
さらには側面もパネル(サイドパネル)も一緒にというお話で、カウンター、サイドパネルを収納に合わせて作ると、「キッチンの手前に家具を作った。」という印象ではなく、「キッチンと一体になった家具」という印象でまとまるので、リビングダイニングから見た時の印象がとてもまとまって見えるのです。

ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

カウンターはナラ板目無垢材の幅接ぎ板。サイドパネルやそのほか見え掛かり部分はナラ板目突板で仕上げています。このカウンターとサイドパネルのどちらを勝たせるか(出っ張らせるか)で印象がだいぶ変わってくるのです。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

今回はカウンター勝ち。大工さんが建ててくれた腰壁にはあらかじめキッチンパネルを施工して頂いているので、今回は私たちは木部のみの工事で済んだことがコストダウンにもつながりました。またこのサイドパネルをカウンターの高さまで立ち上げるかどうかで印象が変わります。今回Mさんは手元を隠したいということもあって、サイドパネルを立ち上げています。また、このサイドパネルを付けない形もあります。その場合はシステムキッチンの側面が見える形になるので、今回のようにカウンターを作るところまで考えるとサイドパネルも一緒に作りたい、とおっしゃる方が多いです。

そこで、どこで工務店さんと私たちの工事を切り分けるのかを検討していきます。
一番スムーズなのは、工務店さんの工事が終わってお引渡しした後に私たちが工事に入らせて頂く形です。建築工事中に見ず知らずの家具屋が入ってくることは工事管理の責任問題にもなりますので、そのばあは工務店さんの下に入って作業をすることが多いのですが、今回のように施主様から直接の依頼でという場合は、工事中に入られると見守る部分が多くなってくるので工務店さんとしてはなかなか良いお返事をしづらい部分です。
そこで、採寸は建築工事中にさせて頂いて、工務店さんの作業はキッチンの据付と、キッチンの前(ダイニング側)の腰壁を石膏ボードが張られた状態でストップしたままお引渡しをして頂いて、そこから先はお引渡し後に私たちのほうで家具でキッチンを囲っていく、という流れになりました。
今回の工務店さんの古川林業の監督さんも快諾してくださったのがありがたかったです。
大きなハウスメーカーさんとなると、品質保証上、工事期間中の新規業者の出入りを禁じているメーカーさんも多いなか、柔軟に対応してくださいましてたいへん助かりました。

ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

カウンターのすぐ下はオープンスペースにして飾り棚のようにして使ってくださっています。また、のちのちダイニングテーブルをこの家具に付けて使うようになった場合にはダイニングテーブルの延長したスペースとして使えるのも良いところです。

そうして、新築工事が始まり採寸できる時期になるまで、Mさんの原案を元にいろいろと形を検討していきます。
最初はダイニングテーブルと収納が重なる部分は扉の開け閉めをしないでも物の取り出しがしやすいようにと考えていた中央部分の棚をなくして、かわりに左側に細かいものがしまえるような引き出しを設けることに。
右側は、コンロ前の壁があって収納の奥行が深く採れないこと、動線上、突きあたりに細かいものをしまう引き出しがあるよりはキッチンや2階へ上がる階段がある左側のほうが開放的でしたので、比較的人がすれ違っても窮屈にならないと考えられましたので。
そして、右のほうカウンターだけがバルコニー側の壁まで延ばす形にして、キッチンとの一体感がより出るようにしたのです。

そうして、採寸です。
木工事が完了したタイミングでと思っておりましたが、ほぼ仕上げ工事後のクリーニングの最中にお邪魔させて頂くことに。
そこで監督さんに挨拶させて頂き、壁に回す巾木は家具設置後にこちらで付けることになり、家具に引き込むコンセントも壁からすでに電源を取りだしてくれていて、とてもきれいに仕上げてくださっていました。
家具を壁に固定する部分は特に問題なさそうで、ちょっと心配だったのはサイドパネルをシステムキッチンに固定する部分。
キッチンの素材によっては固定しづらかったりするので、キッチンの引き出しを外して、キッチンの側板の構造を確認して、固定に問題ないことを確認して今日のチェックは完了。

ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

このオープンスペースを広く採るために仕切りの板を入れなかったのです。でもこのデザインで仕切りの板を入れないと天板が必ず垂れさがってきます。そこで天板のすぐ下に幕板を入れることで垂れ防止の役割を持たせました。

そうして、いよいよ制作に取り掛かり、採寸から1ヶ月後に設置工事にあらためて伺わせて頂きました。
ちょうどコロナウィルスの影響がひと段落するかどうかというタイミング。ご主人はテレワークのあと、奥様と一緒に私たちの家具取付後にオイル塗装を行なって頂けることになっていまして、取付作業を順調に進める中で塗装方法をお伝えして、なるべくこういう社会状況ですからご負担の内容に短時間で進めていきます。
おかげさまで無事に取付は完了し、塗装もきちんと2回の塗装を終えてきれいな表情が現れた家具になったのでした。

ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

引き出しの様子。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

引き出しの様子。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

引き出しの様子。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

引き出しの様子。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

扉内の様子。「まだ全部は使えていないのですよ。」とMさん。


ナラ材を使ったキッチン対面カウンター下収納

扉内の様子。

その後、あらためてご挨拶に伺わせて頂きました。
ここまで作り込んだおかげで、キッチンの木の一体感がとても心地よいのです。ダイニングテーブルの印象と相まってとても整った空間になりました。
これからいろいろな時間の過ごしかたが変わってくる社会になるのではないかと思います。
長い時間過ごすであろうリビングが心地よいものであるということ、特に家に居る時間が長くなるお母さんにとっては心の拠りどころのようになってくれたらうれしいのです。

ナラのキッチンカウンター収納

価格:400,000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は15,000円から、取付施工費は50,000円から)

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