掘り出す
「クルミのダイニングテーブルとダイニングチェアのオーダー」
藤沢 N様
design:Nさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hiroyuki kai/kenta watanabe/daisuke hirose
painting:hiroyuki kai/kenta watanabe/daisuke hirose
例にもれず、私も子供の頃はゲームが好きでした。
特に剣と魔法が行き交うファンタジーの世界のロールプレイングゲームが好きでしたね。
敵をやっつけては経験を積んで自分が強くなっていって、最後の敵に立ち向かうというタイプのゲームですね。
でも好きなんですけれど苦手なんです。
主人公がダメージを受けると、「あぁ、やられてしまう。辛いなあ。」とか「暗い洞窟に入り込むときっと帰ってこられるだろうか。」とかTシャツに短パン(私の小学校は長ズボンが原則禁止でしたので)姿の自分がテレビ画面を見つめてコントローラーを動かしているだけなのに、気持ちは痛みを感じている戦士だったり、暗闇を怖がる魔法使いだったりするのです。
だから、何だか怖くてなかなか先に進めなくて・・。
そんな私でもこうして大きくなると、いろんな場面でロールプレイする機会が頂けるようになりました。
この家具を作るとこういうふうに過ごしやすくなったり、こんなふうに動きやすくなったりって皆さんに伝えられるようになったのです。
そういう役割が仕事になってくると、いろいろな場面や事象を想定してお話ができるようになる。
でもね、時々こういうふうにご相談頂くことがあるのです。
突然ご相談にいらしてくださって、「イマイさんはどう思われますか。」と。
うーむ、いろいろ想像豊かになった私でも、短時間で「どう思われますか。」と言われてしまうとなかなか答えにくかったりするのです。
ステレオタイプな意見はあまり好みではないので、いつもはご相談にいらしてくださるまでにその人の思い描く形がある程度決まっていたりして、私が伝えるべきことがある程度限られているか、もしくは決まっていない場合はその前段階としてその方の暮らしぶりや好きなものをお聞きしながらその人の暮らしを思い描けるようになってからその人にとって良いと思えることをお伝えするようにしているのです。
そうじゃないと、自分の意見が希薄なものになってしまいます。
だから、私はロールプレイできるようになることで皆さんといろいろお話ができると思っているのです。
だからね、余談ですが、「イマイさんにお任せします。」と言われるのは大変苦手なのです。笑
でも、それがお話を重ねていてもなかなか思い描けない時もあったりします・・。
それは、形がシンプルな時です。
ふだんオーダーキッチンやオーダーの食器棚などの形が複雑だったり大がかりだったりするものを考えている時は、条件や形の制約がいろいろあったりして、かえってそのおかげで、おのずとその人にとっての方向性は見えやすいのですが、シンプルにテーブルって言われるとかえってすごく悩むのです。
テーブルって言うと選択肢はそれほどないように思えてしまうのです。
もちろん、それ自体のサイズや使う人の体に合うかどうか、天板や脚の形状をどうするか、搬入に合わせてどういう形にしたら良いかというようないろいろと考えることはあります。
でも他の大きな家具たちに比べると、ある程度選択肢は限られているから、お話しできる方向も決まってしまうような気がするのです。
だから、Nさんが何度も何度もテーブルの具合を確認しに来てくださった時は、うーん、すみません、もう私がお話しできることはあまりなくて・・、なんて思っていたのですが、当のNさん、すごくうれしそうにニコニコしながらテーブルを使う時のバランスや触り心地や脚の形などを奥様とまだ小さなお子様をあやしながらお話されていたのです。
それを見ていたら、(ああ、そうか・・。家具を作ってもらうってそういうことだよね。)ってふと思ったのです。
はやくもこの仕事を初めて27年が経つのですが、こういう言い方は失礼になってしまうかもしれませんんが、いつの間にかロールプレイもいろいろなシチュエーションがあっても、方向性が似たように思えたりして、皆さんの暮らしかたは千差万別ではありますが、こういう場合はこう、というような型が自分の中でできてしまっていたようで・・。
「最初にある程度お金を貯めたら強い武器を買って、ある程度の経験値がたまるまではボスをやっつけに行かない」みたいなゲームの紋切り型が仕事でも出ているような気がして・・。
そういう時にNさんのように目をキラキラさせながら、テーブルの脚についてずっと家族の思いを描いている姿を見ると、家具を作らせてもらうことってこういうことだよね、って気づかされたのです。
だから写真で見ると形はとてもシンプルで、ショールームにある形と大きな違いは無かったりします。
それでもね、こうして、Nさんのダイニングに置かれると、そうだよね、この形はここにしかない形だったんだよね。
仏師が木の塊を見つめてその中に隠されている仏像を掘りだすように、Nさんはここに置かれる形がこれだって知っていたのですよね。
ああ、おもしろい、だから家具作りはおもしろいって、再びみたびと気づかされました。
クルミのダイニングテーブル
価格:260,000円(制作費・塗装費)
クルミのダイニングチェア
価格:65000円/95000円(制作費・塗装費)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は13,000円から)
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