お化粧直し
「食器棚のオーダー」
海老名 K様
design:Kさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:shouko tsuchie
painting:shouko tsuchie
ときどき、私たちと内装仕上げの仕事で一緒になるカーテン屋さんの娘さんが結婚したと父から聞いてしばらく経った頃、「気に入った食器棚がないからどうしてもうちに作ってほしいんです。」と尋ねてきました。聞けばうちの近所に越してきたとのことで面白いものだなぁなんて思ったのでした・・。
「うちは、システムキッチンがリビングと対面しているのでよくあるキッチンの吊戸棚が向かいの背面の壁についているんです。システムキッチンとは色が合っているのですが、ダイニングからキッチンを眺めた時にその戸棚だけが浮いて見えてしまって・・・。」
「そのキッチンの扉の色が緑色なんです。」
「緑色ですか!?どんな感じだろう・・。」
そんな話を聞いて訪れたK邸のキッチンの扉はこんな感じでした。蛍光灯に照らされた緑色の扉はなぜか冷たい感じを受けたのです。
そこで今回は、その戸棚のお化粧直しをして、さらに棚を追加して床から天井までの食器棚を作ってしまおうということになりました。
上の戸棚には手をつけずに扉のみをアメリカンチェリーで作り直し、その戸棚の下に高さの低いスリガラスの扉の付いた収納をつけました。ところでこの戸棚の作りつけてある状態がとても悪く、戸棚自体が手前に傾いている状態で壁についているのです。幸い(といっていいのか、)戸棚がだんだんとずれてきているわけではなく壁自体が傾斜しているようで家具が落ちてくることはないのですが・・。
Kさんも仕事がらこのような状況は分かっていて、「マンションなんてこのくらいのズレはどこの現場に行ってもあるからね。」などと言っていました。この戸棚を外して吊り直すと家具屋の仕事だけでは終わらなくなりそうでしたのでこの既存の戸棚はこの状態のままで私たちの戸棚だけ水平を計って出来てしまう家具との隙は化粧をして取り付けることにしました。
余談・・・
最初Kさんの奥さんが考えていたプランはもっと複雑でレンジや炊飯器を専用にしまえる棚や幅の広い引き出しや大きなガラス戸などいろいろなものがきちっと納まるようなプランを考えていたのですが、その後ご主人を交えて直接打ち合わせをした時に、やはりご主人も私も男だからなのか、もっとシンプルな形にした方が良いという話になり、その方が将来的に考えると自由が利く食器棚になるから使いやすいよ、と奥さんを説得してこのシンプルな形になりました。
食器棚はそのほとんどが女性のための家具ですので、使う奥さんにとってはとかく機能を求めがちになります。水平収納扉や垂直収納扉や上にスライドして開く扉や下に降りてくる戸棚などなど・・。機能が増えれば木の加工だけではできない部分が増え、勝手の良い金物に頼る事となります。
年々電化製品のサイズは小さくなっておりますが、やはり今現在持っている家電に合わせた寸法の割付や特定の機能しか持たない収納は生活スタイルが変わったときに機能しなくなることがあります。
ましてまだお子さんがいない家庭であれば子供が生まれてからの生活は大きく変わることになるでしょう。また、いろいろな金物を多用すれば当然将来的に起きるであろう故障や不具合に対応しなくてはなりません。
最近家具の修理をしていて思うことに15年くらい前の家具に使われている金物が既に廃番となっていて金物を交換するだけではすまなくなり新たに大掛かりな加工をする必要が出てくる家具が多いと言うことがあります。ですので複雑な金物ほど壊れたときのことを考えると不安を覚えるのです。
そのような時の変化に対応できる、そしてもっと自由に使える状態の収納であるのが一番良い家具の使い方なのではとそうご主人と話し合ったのです。
費用については、お問い合わせくださいませ。
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