「ナラ板目の壁面いっぱいの食器収納棚のオーダー」

鎌倉　K様

design:Kさん
planning:daisuke imai
producer:tatsuya suzuki
painting:yasukazu kanai

「初めまして、ホームページの製作例を拝見しまして、こちらにお願いしたいな、と思いご相談です。子供が産まれるのをきっかけに新居を昨年4月に購入、6月に長女が産まれ、生活も少しづつ落ち着いてまいりました。
そんな中、妻にこの家の中で足りないものは何かと聞いたところ、キッチンに壁面いっぱいの収納が欲しいとのこと。なるほど、とそこから色々と調べていたらこちらにたどり着きました。
妻のイメージとしては、全て隠せる壁面収納が理想のようです。
オーブンレンジ、炊飯器、トースター、ワイン、などが収納出来ればと思っております。
仕上げについてはあまり詳しくないので、木の材質が素朴なものが好みです。
大きさも大まかに計っているので、正確な値ではございません。申し訳ないです。冷蔵庫の上のスペースも収納に出来たらと思っています。Mさん宅のような。
そこからは是非イマイ様の経験の中からアドバイスを頂き、思っている以上の家具が出来たらなぁなどと勝手に期待を膨らませております。
どうぞよろしくお願い致します！！
後ほど別途メールでキッチン周りの写真を添付したものをお送りしますので、ご参考になるかわかりませんが、ご覧になってください。
消費税率引き上げの前にお支払い出来たらなぁなんて思ったり、良いワイン1本買えるなと。出来たらで構いません。」
とユーモアのある素敵なメールを頂きました。
うれしいですね。頑張らなくては。

と思ったのですが、Kさんの今回の食器棚。奥行きが深いのです。奥行きが深い家具って、考えるのも使うのもそれなりに難しい部分があったりするのですが・・。どうしようかな。
そして、原案を作りいろいろとお話を伺っていくと、珍しくキッチンの手前から食器棚を置くつきあたりまでの壁が180cmくらいありそうということでした。
一般的な奥行45cmくらいの食器棚を入れても、キッチンまで135cmも開いちゃう。キッチンを使いながら食器棚の家電を使うにはちょっと広すぎるスペース。
という珍しい間取りなのでした。
そこで、奥行が70cmに近い食器棚がほしいというのがKさんの希望なのです。

でもね、奥行が深い家具って歪みやすいのです。
時々、押し入れのような大きな収納を作らせて頂くことがあったりするのですが、家具の1辺が大きくなると、扉などにひずみが出やすいので、なかなか苦労することが多かったりして。
そこで、いろいろと補強となる板を差し込みながら形を考えていくことに。
どうにか良い形にまとまったところで、Kさんのお宅まで採寸に。

設置場所はすっきりとした場所で床や壁の様子も良かったので、採寸はすぐに終わってしまい、お茶を頂きながらお話がだんだん家具から発展していきます。
Kさんのご主人は、有名なお惣菜屋さんのお店を任されていらっしゃる方です。どうりでお話が上手！
神奈川県内や都内のデパートのお店を忙しく切り盛りしているのですが、その時に話題となったのが、スタッフさんとのコミュニケーションやほかの御惣菜屋さんとの違いをどう見せていくかなど。
お店ごとに一緒に働く方々の性格も違うし、お総菜を作って、対面で販売して、といろいろな能力が必要になってきます。
それをKさんだったらどういうふうに対応しているか、どういうものを作っているか、いろいろなお話を聞かせてくださいました。

年が近いこともあって食器棚の相談の時間以上に話し込んでしまいましたが、一番印象に残ったのは、他のお店もきちんと評価していること。
安くてもこれだけの品質を保てるのは素晴らしい、とか、どこのお店の味はとても美味しい、とか。
自分本位にならずに、自分も含めた大きな物事を客観的に見てらっしゃるところがとても良い勉強になったのでした。
自分の良いところ、悪いところ、周りの良いところ、悪いところ、それを並べてその根拠を探して、良い方法を見付けていく。
当たり前のことですが、それがきちんとできるようになることがベテランになることだと思ったのです。

そんなお話しばかり覚えているのですが、プランもきちんとご意見を反映させてようやく一つの形ができあがりました。

そして、設置当日。主に使うのはもちろん奥様なのですが、ご主人のほうがワクワクしている印象。
(ご主人もお総菜を何でも作れるスペシャリストですから、もちろんワクワクしてくださいます。)
この日のために、キッチンお天井についている照明も家具の扉の開閉を妨げないような薄型のものに買い替えて、今日を待ち望んでくださったのですから。

大きさが大きいことと、電気配線の取り回しがなかなか大変だったこともあって、少し時間は掛かってしまいましたが、無事に設置は完了。

Kさんもとても喜んでくださって、私たちもホッと胸をなでおろしました。

「本日はありがとうございました！
あんなに大きな棚だったのに、木の目が全て揃っていて感動！！
至る所にショックを吸収するゴムを壁にまでつけていただいていて興奮！！床を気遣って頂いて車輪を気にして頂いて感動！！
とにかく長い間楽しんで、使いこなせるようにこの食器棚と幸せに向き合っていきたいと思います！！
出産、子育てと自分にかけがえのないプレゼントをくれた妻に本当に良い贈り物が出来ました！！
娘も大きくなったら料理などに興味をもってくれたらと、色々想いを巡らせています！！
本当にありがとうございました！！
妻からもこれから長いお付き合いになると思いますがよろしくお願いしますと申しておりました！！
取り急ぎで散らかった文章でお恥ずかしいですが、とりあえずのご連絡でした！！
作業してくださったお二人にもよろしくお伝えください！！
穏やかな方たちでとても安心して作業を拝見させて頂きました！！
それでは子供が寝そうなので(笑)おやすみなさい！！お体ご自愛なさって下さいね！！」

愛のあふれる文章！
Kさん、ありがとうございました。