ほほえむ、にぎわう、台所。
「クルミの食器棚のオーダー」
杉並 S様
design:Sさん/daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:hideaki kawakami
painting:yasukazu kanai
食器棚を作りたいというお電話を頂いたのです。
家具をご相談してくださる皆さんの連絡方法はいくつかあるのですが、一番多いのがメール。ウェブサイトに問い合わせフォームがあるからだと思うのですが、やはり一番多くみなさんから頂く連絡方法はメールです。
次に電話。その次はFAXですが、FAXでお送り頂くのは昔に比べるとたいへん少なくなりました。今はスマートフォンが普及して、手書きのものでも簡単に写真に撮ってメールで送れる時代になったからでしょうか。
その2番目に多い問合せ方法の電話ですが、なかなかタイミングが合わないことがあるのです。
いつもは電話が掛かってきても手元の私の電話で受け取れるようにしているので、工房に居る時ももちろんあるのですが、移動中だったり、打ち合わせ中だったり、取付作業中だったりすることも多くそうなると電話に出られない・・。
折り返し電話すると、知らない携帯電話番号が空いて先に表示されるからか出てくれないことも多かったりします。
出会いはタイミングなのですね。
でも、うまくタイミングがあって電話でお話ができると、声でお話しできる分、お互いの気持ちが伝わりやすいのでいろんな話ができるのです。
でも、メールのようにうまく言葉を考えながらお伝えすることができない時があったり、今話していることの次に話すべきことを考えて、先ほど伝えたことが頭の中でうろ覚えになってしまったりすることもあるので、いろいろと考えるとやはりメールでご相談頂く方がゆっくり考えをまとめてお伝えできるなあ、と受話器を置くたびに少し思うのです。
そして、Sさんから食器棚を作りたいというお電話。
大まかな内容は、そのお電話で分かりましたが、細かい部分についても教えて頂きたかったので、あらためてメールを送って頂くことにしました。
「今井大輔 様
早速のご回答ありがとうございます。
新居に伴い、インターネットなどで食器棚をいろいろと探していく中で今井様の食器棚に一目惚れし、一刻も早く問い合わせしなくては!!という思いでお電話させていただきました。
それゆえに、アバウトすぎる内容のメールを送ってしまい申し訳ありません。
現時点ではざっくりとした希望しかお伝えできないのですが、、、」
と、とてもうれしい言葉を頂きました。
Sさんのように大事な思いを持って来て下さる皆さんがいらっしゃるから私たちは頑張ることができるのです。
そのメールにいろいろと書かれたSさんのご要望を踏まえて、さっそくプランを一つ作成しました。
「ご連絡ありがとうございます。
図面を見てさらにワクワクしてきました!!
いただいた図面をもとにいろいろと考えたいと思います。
また、来週18日17時から、現地でキッチン窓の高さなどを採寸させてもらうことになりました。
以前のメールで、5月初旬に現地確認をというお話がありましたので、もしご都合がよろしければ、今井様にも一緒に現地確認していただいたほうが話がスムーズに進むのではないかと思いまして。
急なお話で失礼かと思いましたが、一応ご相談させていただきました。
よろしくお願いします。」
というお申し出がありまして、幸いその日は予定が空いておりましたので現地を確認させて頂くためにお伺いしたいのです。
今回は一般的な食器棚の設置場所と違って、屋根の勾配が天井に現れているキッチンスペースです。しっかり確認しておかないと。
そして、2階への搬入をどのように行なうかを確認して頂いて現地での打ち合わせは終了。
そのあとにSさんのご自宅に伺わせて頂いて、キッチンや今使っている食器棚を拝見させて頂いて、イメージに近い形を打ち合わせていきました。
そして、その中で興味深い話題になったのが、金額に対する捉え方でした。
家具をオーダーで作るということは、もちろん簡単なことではありませんので、量販店で販売されている家具に比べると高くなってしまうことが多いのです。
私たちは、私たちの作業費をその家具を作る為に掛かる時間(日数)に換算して加工費用を計算していきます。
そこに掛かる材料費を加えたものが家具を製作するうえで掛かる費用と考えております。
家具は製作するだけではなく、塗装が必要な素材であれば塗装のための費用、運搬するための費用、壁にきちんと固定して仕上げるための費用、そして、今こうして打ち合わせを行なって形を考えたりするための設計費用が掛かります。
そこには無駄がなく、私たちみんながきちんと気持ち良く仕事をして行き会社を運営してゆくための費用となっているのです。
家具に限らず、よく量販店ではある時期に限って価格を大幅に下げるような販売方法があったりします。
使う人にとって、必要なものが手に入れやすい金額になっていることはとても魅力的なことであります。
ただ、そこに私たちが示した金額は家具を販売しているお店が示している金額とは質が違うものです。
私たちは私たちがその家具を作るために掛かる費用を提示し、販売店は必ずしもではありませんがその家具をうまく販売するために調整できる金額を提示していると思っております。
Sさんとの話の中で、率直に、家具屋さんにおいては減額という対象のなかに値引きというものもあるのでしょうか、という疑問を頂いた時に、このようなお話をさせて頂いたことがありました。
ご主人も奥様も物を作ることの大変さや楽しさをとても良くご存じのお二人でしたので、「なるほど、価値というものは、いろんな示され方があるのですね。」と楽しそうに頷かれていたのを思い出します。
こうして、その家具の姿や価値を、そのままの姿を受け止めてくださったSさん、家具のできあがりを心待ちにしてくださって、そしてそのできあがりを大変喜んで頂けたのでした。
「いや、想像以上のできあがりです。この木目の表情や佇まいがね。私も母も家具が好きで、その影響を受けて私もいろんな家具を見ることが好きになったのですが、この形はやはり美しいです。」とにこやかにほほ笑みながら、楽しそうに話して下さるご主人。それを隣で見つめる奥様。
うれしい光景、うれしい場所で使ってもらえることになって良かった。
Sさんにはそのあともご相談を頂いて、スツールを作らせて頂いたり、家具のご意見を頂いたりと、とてもうれしいお付き合いが続いているのです。
ありがとうございました。
クルミの食器棚
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。