「テレビボードのオーダー」

根岸　K様

design:daisuke imai
planning:daisuke imai
producer:number8 furniture
painting:daisuke imai

オーダー家具を頼みたいって思った時に、どういうふうにその工房に相談すれば良いのか、相談にきちんと乗ってもらえるか、それは不安だと思います。たとえ、「お見積りは無料です。｣って書いてあっても、断れない感じになったらどうしよう、とか思いますよね。何しろ自分が一番そう思いますから。（笑）特にインターネットなんて顔が見えないから、余計に分かりづらかったりして。私たちは自分たちなりに分かりやすくしたいと思って、直接会って話していなくても直接会って話しているかのような、近くに感じてもらえるようにがんばっているのですが、それでも分からない場合は、もう率直に聞いてください。
Kさんもそういうふうに少し不安に感じていた人なのでした。
「カウンター下に収納する物が欲しいです。
家全体の色はなるべくまとめています。でも、私は収納がほんとに下手で、家じゅう細かなものが散らばっています。
インテリアデザインは全くセンスなし（笑）
我が家を見て、お洒落な収納を作って欲しいです。
一番好きなイメージは北欧系です。
ある程度の予算を知りたくて問い合わせをしたのです。
お洒落なものをたくさん作っていることは分かったのですが・・・。
お洒落なだけに、すっごい高いのかな。。。と今心配してます。」
と単刀直入なメールを頂きました。

まずはお返事です。
「はじめまして、お問い合わせありがとうございます。
カウンター下の収納をご検討されているのですね。ある程度の費用をお知らせしたいと思いますが、オーダーで家具を製作する場合は、「家具に使用する素材」「大きさ」「内容」をある程度考えた上で、そのくらいの材料費が掛かって、どのくらいの加工日数(加工費)が掛かるかと言う形で費用を出していきます。
そこで、どんな感じの仕上がりを希望されているか、例えば、「ホームページの○○○の○○邸」とか、「木のナチュラルな感じでオイル塗装の仕上がりが好みです。」とか、「赤茶色の木を使って、ピカピカした塗装の感じが好みです。」など仕上がりについてのご要望がありましたら、どのようなことでもかまいませんのでお知らせ頂ければと思います。
そのうえで、どういう素材を使ったら良いかを検討したいと思います。
また、プランはどのような感じを考えておりますでしょうか。例えば、「幅2700mmの一番左は○○をしまって、真ん中はテーブルと同じ高さで使える棚がほしくて、右は引き出しが良い」とか、「全て引き出しにしたい」とか、「幅2700mmの一番上だけ横にずらっと引き出しにして、その下は扉で、主に雑誌をたくさんしまいたい」などどんなことでも教えて頂ければプランと費用を考えるきっかけになりますので、ご要望をお知らせ頂ければと思います。
もしくは、メールだと伝えにくい、表現しにくいと言うようでしたら、一度お伺いして直接お話をお聞きしながらプランと費用について打ち合わせることも可能ですので、そのような場合は遠慮なくおっしゃって下さい。
お伺いできる日のスケジュールをお伝え致しますので。
家具作りは、私たちからの一方通行ではなく、お客様と私たちの対話から物作りが始まりますので、時間を掛けて良い家具を作って行ければ幸いです。
それでは、ご検討下さいます様よろしくお願い致します。」

「お世話になります。Kです。
依頼が大雑把過ぎて、すみませんでした。
それで！HP片っ端から見ました。そうしたら私好みが見つかりました！
「swell imagination」
これこのまま欲しいくらいデザインが気に入りました。引き出しとワゴンが欲しいです。フリッパーはいりません。それから、今、六ヶ月の子供がいます。これから細かいおもちゃがたくさん増えていくと想うです。ガサツな私は、おもちゃをバケツに突っ込んでしまいたいと何ヶ月も前から考えてます。そのおもちゃバケツをしまうワゴンが欲しいです。
写真を見てください。見ての通り細かい物がゴロゴロ色んな所に散らばっています。どこにしまったらいいのか、収納が下手な私は困っています。
左側にある、ナチュラルの収納タンス？！これは量販店で気に入って買ってきましたが、たくさんの化粧品や細々している物を詰め込んでいったらベニヤが薄くて真ん中からそこ抜けて今じゃ使いものになりません。
ですので、このタンスを撤去しようと考えてます。
また、うちには食器棚がありません。本当の本当の希望は、写真の壁、L字型にスペースありますよね？L字のIの部分に食器を入れたく＿の部分に収納スペースが欲しいのが　一番の希望ですが、予算が足りないと想うので・・。「swell imagination」のYさんのように作って欲しいです。
あのハンドル、イマイさんのハンドルではないですよね？？
う～（＞＜）この取っ手がいい。
私の意見全て出し切ったと想います。
お返事お待ちしております。」
愉快な人だなあ、と言うのがKさんの印象でしたね。

これでようやく、何となく一つの方向が見えてきたので、プラン作りです。私はどちらかと言えば大容量の収納を考えていました。カウンター収納となる横に長い収納と、左の天井までの壁をいかしたL型の家具を。そうすれば、かなり部屋が整理できるし、背の低いところに引き出しがずらっと並んでいたら可愛いかなって思っていたのですが、いろいろと相談した結果、まずは背の高い部分だけを作ることに。

そして、今まではメールのやり取りだけだったのですが、ここで初めてKさんとお会いしたのでした。いろいろとお話させて頂くと、メールの文章そのままのユニークな方で、ご主人と話しているとまるで目の前に夫婦漫才を見ているような愉快な気分にさせてくださるお二人でした。

そんな感じで、時には文句を言い合いながらも、お二人ですてきな形を見つけることができました。あとは、それを私たちが形にするだけです。
この時に、できあがりのイメージをピッタリの形を思い描くのは、なかなか大変で、家具ができ上がって、ようやく良い形だって分かって頂くことが良くあります。それはそうかもしれません。私は立体的な図面を描くのではなく、あくまで2次元の図面に細かく説明を加えて、そこに手書きのスケッチが入ると言うシンプルなプレゼンテーションなので、Kさんも同じく、図面を見ただけでは細部まではイメージしにくかったのではないかと思っております。
特にシンプルな形だと、図面だけではとても分かりにくいのです。。素材や色や細かい部分が重なってようやく一つのきれいな形になるわけで。だから、その分実際に目の前にした時は皆さんとても感動してくださいます。Kさんも、お二人で「おー、すごい。」と。率直な喜びの声を頂けると言うのは、ありがたいことです。

お正月に年賀状を頂きました。
「お久しぶりです。作って頂いた家具がすごく良くてイマイさんにお願いして本当に良かったです。ありがとうございました。
子供が歯がかゆいみたいで、毎日、家具をガリガリ噛んで悩んでいます。キズが増えてしまいましたが、とてもよく使わせてもらっています！（笑）」