すぐそばでご飯を作っているような距離
「タモ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン」
裾野 Y様
design: 平成建設さん/Yさん/daisuke imai
planning: 平成建設さん/daisuke imai
producer: gaku suzuki
painting: gaku suzuki
平成建設さんからご相談を頂きました。
「現在、裾野の方で、新築の物件を手掛けておりまして、そのお客様のキッチンをオーダーで作りたいと考えているのです。」
ありがたいお話です。
三島のKさんから始まった平成建設さんとのお仕事もこれで4度目かな。
なんとなく平成さんのテイストというか雰囲気が分かるようになってきたように思えます。
サポートとして、ベテランの方々がバックアップしてくださっているのですが、皆さんほぼ若く生き生きとした印象。
今回、Yさんの設計を主に担当された藤井さんも落ち着いておりますがとてもフレッシュな感じ。
初顔わせをしたYさんと私はどちらかというと同じ世代なので、「若いっていいよね。」と楽しくお話しさせて頂いたのでした。
そういう新鮮で躍動感のある空気の中でお仕事をさせてもらっていると、お話をしにきた私もYさんもなんだか元気になるのです。もちろん、きちんと生活空間を考えたり、動線や構造まで思いを巡らしながら、建築空間を構成していくのですが、平成さんのスタッフさんがとても楽しそうに仕事をしている姿がとても心地よいのでした。
常々思うことがあります。
いつか誰かがおっしゃっていたのですが、「自分が楽しんでいれば、みんなもきっと楽しい。」と。
「楽しい」と、「楽しくない」の境目は自分で決めることで、自分が楽しいと思っていれば、まわりから見たらきっと大変そうに見えることも楽しんでできるのです。そういう姿を見ていると、見ているまわりの人たちまで、その楽しい空気を感じることができるのだ、ってそう思っているのです。
昔ね、「トムソーヤーの冒険」というテレビアニメがやっていたのですが、そこでトムがこういうシーンがあったのです。
トムがポリーおばさんに頼まれてペンキ塗りをすることになったのですが、もちろん退屈なペンキ塗りにトムは嫌々作業を進めていたのですが、友人が通りかかった時に、トムはずる賢く思いついたのでした。
いかにも楽しそうにペンキを塗ってみせてみようと。
すると、友人たちはどうしてそんなに楽しいのだろう、自分もやってみたいってそう思ってくるのです。しかし、トムはそれでも作業をやめない。
「こんなに楽しいことを君たちに教えてあげるわけにはいかないよ。」
すると友人たちはそのトムの様子を見て、どうしてもペンキ塗りがしたくなって、「じゃあ、ほら、トム。これをあげるからさ。代わりにペンキ塗りをさせておくれよ。」とトムは渋々友人に刷毛を渡すふりをして、まんまと楽してしまう。
結果的にトムのズル賢さが目立つお話で、子供の当時は「トムずるいなあ。」と思っていたのですがし、今こうして思い出すのは、楽しそうにペンキ塗りをしているトムを羨ましそうに見つめる友人たちの姿でして、自分が楽しそうにしている姿を見せるとみんなが興味を持ってくれるんだ、ってなんだか今更思い返したことがありました。
そういうふうに家具を作る楽しさや、もちろん辛さもありますが、オーダーで家具を作ることの良さを知ってもらいたいって思っがことがウェブサイトを始めたきっかけの一つでもありました。
こうして平成さんのお話を聞いていると、その楽しい空気がこちらにも良く伝わってくるのでした。
そんなお話の流れで、何度か藤井さんとYさんのプランについてお話をするにつれて、キッチンの使い勝手を細かく考えるにあたり、Yさんと直接お話をさせて頂くようになったのです。
このYさんがとても魅力的な方で、打ち合わせというよりは昔からの友人と話をしているかのような空気を持った人で、キッチンの打ち合わせは、キッチンの細かい内容を決めていくというよりは、Yさんやうちの子供達の話や好きなお皿や器や木の話、どんな暮らしをされているのか、平成さんの皆さんのお話など、Yさんの人となりをお聞かせ頂く、という感じでした。
「イマイさんと話していると落ち着くのよね。」
ありがとうございます。
そういうYさんから教えて頂いたいろいろなピースを一つに当てはめてようやく一つの形がまとまりました。
今回のキッチンは、タモ材を使って作ることになりました。リビングからよく映る部分には無垢材を使い、機能的に使うたい部分は反りや動きの出にくい突き板を使うことに。今回選んだ突き板は通常の突き板とは少し変えて、無垢の萩板のように木目のばらつきを出すために、ランダム張りの突き板を使うことにしました。
この板のおかげでかなり表情豊かなキッチンになりました。
このキッチンを見て、Yさん。「わぁすごい。イマイさん、なんだかうちじゃないみたい。」とうれしそうに話してくださったのです。
ありがとうございます。
キッチンの設置が終わって間もなく、ダイニングテーブルも作らせて頂くことになったのです。その時のちょっとしたエピソード。
「イマイさん、ダイニングの天板、ナラ材でお願いしたいという思いが強いのですが、キッチンと合わせてタモ材の方が部屋全体のまとまりがいいのかなとの迷いあり、決め切れません。
イマイさん、お忙しいところ申し訳ありませんが、何か良いアドバイスありますか。」
「Y様。
フリーハンドイマイの今井大輔です。
ご連絡ありがとうございます。
部屋のまとまりは家具や木目だけで決まってしまうものではなくて、その人の暮らしかたで決まっていくと思います。
どれだけきれいに家具の木目を揃えたり、色も同じに揃えたりしても、「この雑貨すてきね。」「旅行のおみやげにこのお人形を買って飾りたい」「きれいな食器がだんだん増えてきた」と、衝動的に気に入って買いそろえたものが増えてくるとどんなにきれいにまとめた部屋も小物の色がうるさく感じて、まとまりがなくなってきます。
そうなるとせっかくきれいにまとめた家具の印象もあまり良い印象に見えなくなってくることもあります。
だから、家具の木目をすべて一緒にこだわらないで、そこでどう暮らしていくかをきれいに思い描ければ、私はナラでもタモでも良いのだと思います。
そして、Yさんは、タモのテーブルが嫌いなのではなくて、純粋にショールームにあったナラ柾目のテーブルが好きになってしまったのだと思います。
いろいろ悩んで、現場でタモのキッチンも観ているけれども、まだ決めきれないということは、ナラの柾目のテーブルがきっと好きなのだと思います。
だから、タモで作ってもきれいにまとまると思いますが、いつか「あのナラの感じが良かったな。」って思ってしまうことがあるかもしれません。(笑)
だから、ナラ柾目で作ったほうが良いかなって思っています。(説得力がなくてすみません。)
ただ、今までナラ柾目が好きな人は、みんなその目に一目ぼれしています。
「家族との大切な場所」
「光が入る、風が抜ける」
この方々も、ナラの柾目の流れるような木目を見て、「もう、この木が良いです!」って一目ぼれでした。
Yさんを見ているとそんな感じがしました。
あとはご主人とご相談されて決めて頂ければと思っております。
下手なアドバイスで失礼致しました。
引き続きよろしくお願い致します。」
「おはようございます、イマイさん。
昨日は丁寧なメールをありがとうございました。
イマイさんのメールを読んでいて、はッとしたことがあって、私は今の出来上がったばかりの家をずーっと思い浮かべていたんだなということです。
気づけば当たり前のことですが、これからあの家で私たち家族の暮らしが始まるわけで、だから今井さんのおっしゃったように第一印象でピンときた、ナラのダイニングテーブルを我が家に迎えたいと思います。
長々とすみません。よろしくお願いします。」
Yさんとお話ししていると、何だか楽しく家具を使ってくださる様子が見えてきたのでした。
静岡と神奈川でこんなにも離れているのに、まるですぐそばでご飯を作っているような距離が感じられる、そういうお仕事だったのです。
天板 | ステンレスバイブレーション |
---|---|
扉・前板 | タモ板目ランダム張り突板練り付け/タモ板目無垢材 |
本体外側 | タモ板目ランダム張り突板練り付け/タモ板目無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」 |
天板 | タモ板目無垢材 |
---|---|
扉・前板 | タモ板目ランダム張り突板練り付け |
本体外側 | タモ板目ランダム張り突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」 |
タモ板目材とステンレスバイブレーションのオーダーキッチン
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