豊かな色
「クルミ板目材と人工大理石コーリアンのオーダーキッチン」
田園調布 G様
design:Gさん/シキナミカズヤ建築研究所
planning:Gさん//daisuke imai
producer:yasukazu kanai
painting:haraki tosou
以前に、「編む」「手ぶくろのような温かさ」の時にお世話になった担当者さんがいらっしゃいました。
何というか、格好良い空気があったのです。「編む」のHさんの時も、「手ぶくろ・・」のOさんの時も、私たちのショールームについて早々にソファに座って、棚に並んだ雑誌を眺めては、1冊ずつ読み始めたのです。お客様と私たちの打ち合わせは、お任せしましたよ。と言う感じが、まったく嫌らしくなくて、格好良かったのです。アキコが渡したコーヒーも「ああ、ありがとうね。」という、何気ない仕草が格好良くて、(ああ、こういうすらっとした人っているのだなあ。)と男ながら惚れ惚れと眺めていたのを思い出します。
その担当者さんであった小林さん。
そのあと間もなく、その工務店さんを出られて、一人で住宅のプロデュースをするお仕事を始められたのでした。
いまいち、プロデュースと言う立ち位置が私にははっきりと分からなかったのですが、「イマイさん、実は今度その私のお客様でイマイさんじゃないと作れないキッチンを希望されている方がいらっしゃるんですよ。」と久しぶりに声を掛けて頂いたのでした。
わあ、うれしいなあ。
しばらくして、小林さんが奥様と一緒にそのお客様を連れていらっしゃいました。
いろいろとお話を聞くと、奥様がこの会社の代表となって、小林さんがそのフットワークを生かして、よい家を持ちたい、と言う方と作り手をつなぐ仕事をされているのだそうです。
今回も小林さんのお知り合いでもあるお客様がご新居を建てるにあたって、キッチンはもちろんオーダーで作りたい、となった時にまずはイマイさんに相談してみよう、と思ってくださったのだそうです。何しろ少し難しいキッチンになりそうでしたので。
そして、今回一緒にいらして下さったお客様は、外人さん。ドイツ出身のスラッと背の高い男性で、もちろん日本語を流暢にお話しくださいます。この日本ではある有名な家具メーカーの日本支社長さんでもある方でした。小林さんの人脈にも驚きましたし、そのような方が私たちのような小さな会社にキッチンの製作をゆだねてくださる(と言う言い方で良いのかな・・)ことも驚いたのです。
「えっ、私たちで良いのですか。」と思わず聞きそうになったくらいです。
「自分には物を作る力がないけれど、みなさん同士をうまくつなぐことが大切な仕事だと思っていて、そういう思いが通じたのかいろいろな方からお声掛け頂くんですよ。だから、良いものを作ってくださる人のところにその方をお連れするのが私の役目です。」と小林さん。
うれしい言葉です。
それで、さっそくお客様のMさんのイメージを具体化していきます。あるショールームで見たキッチンがとても気に入っていて、それを自分の家にスムーズに導入できるように自宅の空間に合わせて練り直すのが今回のお仕事でした。
Mさんの一番のご要望は、「ラフな印象」。ちょうどその頃目黒のKさんのキッチンを作っていたこともあって、そのキッチンを見に来て頂いたりしまして、イメージを固めていきます。あまりにラフな印象になりすぎるのは、帰って奥様の好みではなかったりして、でもデザインの主導権はMさんご主人にあったりして、いろいろと回り道しながら進んでいきます。
「天板はゴツゴツした感じが良いのです。」
「ゴツゴツした感じとはどのような感じでしょうか。」砥石のサンプルをお見せすると、
「そうそう、この感じ。」と言って指示して下さったのは、サンプルの仕上がっていない裏の面。
「ああ、この感じよいですね。」と設計のシキナミさん。「Mさんらしいよね。」とコバヤシさんも。
うーん、これだとカットしたままの石だから、平面は出ていないし、シミだらけになっちゃうかな・・。と悩みます。
・・・あとあと、調べてみるとカウンターにはあまり向かないのですが、バーナー仕上げと言うのもあってこれだとゴツゴツした表情のまま仕上げられることが分かったり、あらためて石屋さんに相談すると、セラミックカウンターと言う当時はまだ耳なじみのない素材があったりしたのです。
でも、コストの面などを考えて、今回はコーリアンのラバロックと言うくすんだ柄で天板を作ることになったのです。
「扉や引き出しの正面材も希望するのはオークだですが、オークと言うのはどのような感じですか。」
「こちらがオーク(ナラ)になります。」とショールームのキッチンを見てもらうと、
「ちょっと表情がきれいすぎるかな・・。もう少し粗い素朴な感じだとどうでしょうか。」
そこで、目黒のKさんのキッチンを見てもらったのですが、あのくらいラフで木の動きも大きく出ているキッチンは帰って奥様から反対を受けそうだったりして、そんな中、打ち合わせで使っているクルミのテーブルを見て、「この感じ良いですね。」ということになったのです。
「このクルミでも木目をわざとバラバラにしてほしいのです。」
通常私たちが家具を作る場合は、木目をつなげてその流れの美しさを楽しむ作りにすることが多いです。そのほうが木の見た目の動きも実際の反りなども不自然ではない動きになることが多いので。でもMさん、パズルのようにバラツキを出したい、その具合はお任せします。ということになったのでした。
キッチン本体の仕上げについても、いつもは掃除をしやすいように内部だけ化粧板を使う形を採るのですが、今回は本体の箱部分に色の濃い化粧板を使って、扉などの正面材だけをクルミを使う形にしたい、ということになったのです。
今までになかった素材の選び方で、Mさん、とても勉強になりました。
ありがとうございました。
そうしてできあがったキッチンは、細かい納まりなど大変な部分があって担当したカナイ君も大変苦労していましたし、ちょっと変わった立地で、搬入から設置も普段のキッチンよりも気を使う大変な作業だったのですが、こうして完成した姿を見ると、仕事に携われて良かったなあと思うわけです。
背面に貼られた抑えた色みで彩ったタイルも相まって、とても豊かな色の空間ができあがったのですから。
その後、たまたまその家具メーカーさんのお店に行く機会があって、スタッフさんとお話したのですが、Mさん、お引越しされてひと段落してから間もなく、スタッフの皆さんを招いてご自宅でパーティを開いてくださったのだそうです。
そのようなわけで「あのキッチンを作ったメーカーさんなのですね。とても素敵なキッチンでスタッフ皆で、すごいすごいって言っていたのです。」ときれいな女性スタッフさんに言われてしまうと、照れ笑いをしながら、あぁ、この仕事に携われてよかったなあと思ったのでした。
小林さん、良いご縁をありがとうございました。
また楽しいお仕事を一緒にさせてもらえるのを楽しみに待っております。
こちらがジェントルマンな小林さんの会社です。
Design Source
http://www.design-source.jp/
天板 | 人工大理石「デュポンコーリアン ラバロック」 |
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扉・前板 | クルミ板目無垢材 |
本体外側 | カラーフィットポリエステル化粧板「グレー」 |
本体内側 | カラーフィットポリエステル化粧板「グレー」 |
塗装 | ウレタンクリア塗装つや消し仕上げ |
クルミ板目材と人工大理石コーリアンのオーダーキッチン
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