glamorous
「クルミ板目材とクォーツストーンのオーダーキッチン」
王禅寺 M様
design:Mさん
planning:daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:masakane murakami
最初にお電話を頂いたのです。リフォームを考えていて、その中でキッチンを自分の好みに合わせて作りたいのです、と。
若い女性の声でしたので、私たちのスタイルのキッチンを希望されているのかなと漠然と思っていたのですが、後日届いたそのご要望になかなか頭を悩ませ始めたのでした・・。
「フリーハンドイマイさま。
はじめまして、先ほどお電話させて頂いたMと申します。
さっそく電話でお伝えできなかったことを書かせて頂きます。また添付ファイルもご確認頂ければ幸いです。」
そこには、このように掛かれており、頂いたスケッチもなかなか難しそうなキッチンが描かれていたのでした。
・コの字型
・マンゴーウッドの扉で板橋Tさんのような雰囲気、木の色味にもう少し黒っぽい筋が入ると嬉しい
・黒色もしくはステンレスの天板
・コンロ:ガゲナウ 1口ガスコンロ、2口IH、バーベキューグリル
・オーブン:ベルタゾーニ ガスオーブン(コンロの下)
・食洗機:ガゲナウもしくはAsko 600mm
・シンク下にごみ箱用スペースがほしい
「マンゴーウッド・・」マンゴーの木かな。使ったことないな・・。
いつもいつもお客様から教わることはたくさんあります。
今回も、樹種やオーブンのメーカー、コンロの納め方など、Mさんからたくさん難題を頂き、たくさん勉強させて頂いたのでした。
最初の難問は、マンゴーウッド。
「自宅で使用しているナイトスタンドで使われている木の雰囲気が好きで、キッチンを作るにあたってぜひ揃えたいと思ったのですが、イメージにあうものがない状態です。
マンドーウッドという素材みたいなのですが、あまり家具やキッチンには使用されない材質でしょうか。
少し毛皮のような見え方をすることもあり、雰囲気があって気に入っているのですが、もし水に弱かったり、精度が出ないなど課題がありましたら、似た雰囲気の代替もご提案頂けると嬉しいです。」
と言うのが、Mさんのご要望。
私はこの時初めて、このような樹種が使われていることを知り、さっそく調べたのです。
楽器によく使われる木のようで、私たちのお付き合いのある材木屋さんにはもちろん取り扱いはなかったので、インターネットで調べてみるとある材木屋さんに取り扱いがあることを知り、さっそく相談させて頂いたのですが、今はそのストックが無いようで・・。
小さな材なら手に入るようなのですが、キッチンに使うとなるとなかなか難しく、やはり似た木柄のもので考えることにしたのです。
よく見ると、ラワンやクルミのような木目の流れ。ところどころ色が濃くなっていて、クルミやメラピーなどでも表現できる雰囲気です。
そこで、こちらに来て頂いた時に、最近よく使い始めてクルミのサンプルを見て頂くことに。
打ち合わせにいらして下さったのは、まだお若いお二人。
聞くと、お二人とも車のデザインに関わるお仕事をされているのだそうで、今回ご自宅のリフォームにあたってもいつもの仕事と同じくらい楽しんで夢の形を実現させたい、と言う気持ちが表情によく表れているお二人でした。
だから、自分の理想に妥協はありません。(笑)
「すみません、イマイさん。雰囲気としては良いけれど、色がちょっと違うかな。」
見てもらったクルミの板を見た奥様。
なるほど・・。木の表情を合わせるのはなかなか難しいところです。でもなるべくその人のイメージに近い材を探すことができるように、Mさんとイメージをすり合わせていきます。もう一度細かいご要望をお聞きして、サンプルを作ることに。そして、サンプルを作ってみて頂いて、また修正したものを見て頂いて。
というのを繰り返して、ようやくイメージに合う柄と色が見つかりました。これでひと安心です。
最終的に使ったのは、やはりクルミ。ブラックウォールナットだと濃すぎるので、このクルミに少しだけ茶色い着色をして仕上げたのです。
さっそくそれぞれの図面を取り寄せて、一つずつ課題をクリアしていかなくてはなりません。
自分に合ったクッカー(コンロなど)を選んで好きなレイアウトで使えるガゲナウのコンロやヒーターなど。形はとてもきれいですが、熱がどう出るのか、下のキャビネットをどう作れば良いのか、見えない課題がたくさん。
オーブンにしてもまた然り。
結局予算の関係でオーブンの導入は今回見送り、将来組み込めるようにガス管、電源、不燃の対応をする形で、今は物が収納できるキャビネットになりましたが、コンロのそばには寸法上設置が難しく、ガス管の取り回しでどのあたりにするか悩んだり、オーブンの下のキャビネットもどのような納まりにしたら良いか悩んだり、頭を抱える日々でした。(笑)
大きな二つの課題をクリアできたと思ったところで、Mさんの夢がむくむく膨らみます。
「イマイさん!シンク下のゴミ箱をしまうところですが、こういったものを導入できますか!」
と言われたのが、電動の引き出し。調理をしている時ゴミを捨てるシチュエーションっていうと、両手がふさがっていたり、汚れていたりすることがあるわけで、そう言った時に引き出しに触るのではなく、ポンと引き出しを押すと出てくると便利だというのが電動レールの謳い文句なのでした。確かに便利だけれどそこまでを求めて良いのだろうか、なんて思ったりするのですが、Mさんの強いご要望は変わらずで、どうにかシンク下に電源を引き込んで、電動ユニットを組み込んで、導入成功。
行儀が悪いですが膝で軽く押すと、引き出しが心地よいスピードで出てくる。そして、ごみを捨てたあとは、やはり膝で押してあげると、ゆっくりと自動でしまっていくのです。なるほど、便利なものがあるのです。
だんだんと、キッチンが家具と言う位置づけではなく、設備と言われる意味が分かるような気がするなあ。
それから、お鍋に水を貼るために使う水栓、生ごみを入れるための専用のゴミ箱、Mさんのワクワクがどんどん盛り込まれていき、その都度私は未経験の形に戸惑いながらそれを実現させるために勉強させてもらいました。
その甲斐あって、できあがったキッチンや食器棚(あとは下駄箱も作らせて頂きました。)を見てくださったMさん。
「わあ、すごい。すごいよ。」と、ここはこうなって、ああなってとご主人にいろいろご説明。
「本当に形になったねえ。うれしいなあ。
イマイさんありがとうございます!本当に本当にうれしいです!」ととてもとても素直な笑顔で喜んで頂いて、その言葉と表情を頂いて、うれしかったのとやっときちんと引き渡すことができた安心感で、ホッとしたのです。
いつもそうですが、私たちの仕事はすべてが初めてです。
細かい加工自体は、同じことを繰り返して経験として分かっていても、できあがるその形は、同じものがなくはじめての形。そしてをそれを使う方もやはり初めて見る形。お互いがその形を見るまではドキドキです。
だからこうしてできあがりを見て頂いて、うれしい言葉を頂けるとようやく胸をなでおろすことができるのです。
「またお金を貯めて、以前にお話ししていた窓辺の寝転がれる本棚を実現させたい、と思っていますのでその時はよろしくお願いしますね。」とMさん。
こちらこそ、よろしくお願いします。Mさん、ありがとうございました。
とても良い勉強になりました。
天板 | クォーツストーン「CRクォーツ オリジンブラック」 |
---|---|
扉・前板 | クルミ板目突板練り付け |
本体外側 | クルミ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ブラック」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ミディアム」 |
天板 | クォーツストーン「CRクォーツ オリジンブラック」 |
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扉・前板 | クルミ板目突板練り付け |
本体外側 | クルミ板目突板練り付け |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ブラック」 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ミディアム」 |
クルミ板目材とクォーツストーンのオーダーキッチン
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