引き出しは私のテーブル
「タモ板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」
多摩永山 N様
design:Nさん/takamasa kikuta
planning:takamasa kikuta/daisuke imai
producer:masakane murakami
painting:masakane murakami
大和のKさんと言うと、もう私たちの初期の頃のキッチンになります。
「toward the good one」
設計の仕事をされるかたわらでご自宅を設計し建てられたのが、2007年。今から8年前です。
その後、Kさんの自宅のテーブルを作らせて頂いたり、Kさんのご友人のNさんのキッチン作りもご依頼頂いたり、娘が同い年なので、家族でお邪魔させて頂いたり、とても良いお付き合いをさせてもらっているのです。
そのKさんから久しぶりにメールを頂きました。
「イマイ様
お世話になっております。また住宅設計を行なっております。
来年2月末入居で設計中です。まだ詳細は決まってませんが木のキッチンや大きな木のテーブルなど打ち合わせで話がでています。
フリーハンドイマイさんのお話をしたところ気に入られたようで、急ですが、日曜日で大変申し訳ないのですが、13日の12時ごろご都合いかがでしょうか?キッチンやテーブルの話を聞かせいただけないでしょうか?
※13日無理して都合合わせなくていいのでご都合つく土日の日程のいくつか教えて下さいね。」
お久しぶりです、Kさん!
そして、このメールの1週間後にとても久しぶりにKさんにお会いすることができました。
前に比べて少し引き締まったような。(笑)
聞くと、お仕事以外でもいろいろな活動で忙しくされているとのこと。お互い娘たちも小学校高学年になったし、時間が経つのは本当に早いです・・。
そんなお話をしながら、今回のNさんの内容をお伺いします。
Nさんとは偶然知り合ったということで、Kさんの自宅を建てた伊沢工務店さんからお話を頂いたのだそうで、そこでKさんの設計のお話しが出て、私たちのキッチンのお話しが出て、それをNさんが気に入ってくださったのだそうです。
なるほど、なるほど。
そして、いつものKさんのテイストでリビングダイニングとキッチンができあがっていくのですね。そして、いつものスタイルのキッチン。
そこにNさんのご要望が重なって、今回は壁付けのI型タイプとペニンシュラタイプの2列にした形で考えることになりました。
さて、どんな形になるのかな。
原案を作り始めて間もなく、KさんがNさんを連れてこちらまでいらして下さいました。
この設計のお話しで初めて知り合ったんです、とおっしゃっていたのにそう思えないようなお二人の気さくな印象。
お話ししていると分かるのですが、それはきっとNさんの持ち前の明るさ。だから、打ち合わせもスムーズでお話がとんとんとまとまっていきました。
でも、お話しがスムーズに進んだのは、Nさんのお話し上手な様子だけではなく、キッチンのプランがシンプルなこともあったためです。
どちらかと言うと、キッチンって女性があれこれと思案して自分の使いやすい理想の形を求めるところと言うイメージがあるので、ここはこうして、そこはああして、使いやすくして、と、いつも皆様からはいろいろなご意見を頂くことが多いのですが、今回のNさんのキッチンは、どちらかと言うと何もない印象で(と言っていいのかな。)、この形で良いのかな、もう少し具体的なイメージをお見せしたほうが良いのかなって思ってしまうくらいでした。
でもね、それは私の考えすぎでした。
プランがまとまってご新居作りが始まり、大工さんの工事も半ばがまで進んできたころに思わずタイヤが空転してしまいそうな急坂を登ってNさんの現場に辿り着くと、とても気持の良い空間が。
Kさんのいつものコンセプト。風が気持ちよく通りぬける空間でした。
この空間があって、このキッチンならシンプルで良いのかも。
そう思えたのです。
シンプルなだけあって製作と設置は問題なく進みました。どちらかと言うと心配だったのはこの丘陵地帯という立地でしたので、運送と搬入のほうが気がかりなくらいでした。
最初のキッチンの設置工事が終わって、あとは細かい食器洗浄機の化粧パネルを作ったり、そのほか細かい部材を作るくらいの残りの作業。それとキッチンのプランが決まって間もなく、「やっぱりイマイさんにお願いしたい。」と言われていた3本脚の丸テーブルもどうにか一緒に納品できそうです。
このテーブルもとてもシンプルなのですが、Nさんが言うには「どこのお店でも売っていない形」なのだそうです。ありがとうございます。
実際は作りをしっかりさせるために、脚と脚をつなぐ幕板のサイズや、脚サイズもいろいろと考えましたが、見た目はあくまでシンプルに。良い形にまとまりました。
「それにね、この椅子、いいですね。」
キッチンようにとちょっと高めに作ったハイスツールを見て、そうおっしゃってくださいました。
ということで、テーブルと椅子も持って残りの作業にお伺いして、これで全ての作業が完了。
あらためて、Nさんのいろいろとお話をお伺いしました。
「最初は、キッチンの形があまりにシンプルだから、Nさん、これで良いのかなってちょっと心配になったこともあったのです。」
「イマイさん、これでいいんですよ。ほら見てくださいな。」と言って、おもむろに壁付けのコンロがあるキッチンの引き出しを開けて見せてくださいます。
「ちょっと散らかっちゃっているけれど、この引き出しが素晴らしく使いやすいのです。」
ふーん。
「普通の引き出しに比べると深すぎたりしないですか。」
「それがね、この深さがいいのですよ。私ね、あまり料理が得意じゃないので、パッて作ったら、ササッて片づけられるようにしたいなって思っているのです。そうするとね、この引き出しが私にとっての作業テーブルなんです。引き出しを開けっ放しにしてお料理して、このテーブル(引き出し)で使ったものは、またそのままこの引き出しにしまっちゃう。背の低いものも高いものも。だからこのくらいの深さの引き出しがいいのです。一番上の引き出しを開けるとAの作業ができるテーブル、その下の引き出しを開けるとBの作業ができるテーブルと言う感じなのです。」
「がさつでしょ。男の子のお母さんみたいに見えるかもしれないけれど、娘が3人もいるのですよ。」と大きな声で笑いながらお話ししてくださいました。
「だから、このキッチン本当に気に入ってるんですよ。ここも見てください。この引き出しを開けた時に食洗機の扉を開けると、ちょうど隙間なく両方開くんです。だから、洗い終わった食器をすぐに引き出しにしまえるの。」と言って、食器洗浄機(今回はハーマンのフロントオープンタイプ)の前フタを倒して、壁付けキッチンの引き出しを開けて見せてくれました。
ほんとだ、あと数センチで前フタと引き出しが当たりそうなくらい。
「ねっ、ぴったりでしょう。イマイさんそこまで計算してくれていたなんてスゴイ!」
「本当ですね、こんなにギリギリだとは自分も思っていませんでした。」
「えっ!?」
「えっ!?(笑)」
と言う場面もありましたが、このキッチンはNさんにとっての秘密基地のような感じ。「イマイさんのキッチン大好き、もうずっとここに居たいです。だから、もしイマイさんのところのキッチン好きな人がいらっしゃったらいつでもご招待します。」
ありがとうございます。Nさん。
天板 | ステンレスヘアライン |
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扉・前板 | タモ板目突板練り付け |
本体外側 | タモ板目突板練り付け/タモ板目無垢材 |
本体内側 | シナ合板 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Nさんが施工) |
天板 | タモ板目無垢材 |
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扉・前板 | タモ板目突板練り付け |
本体外側 | タモ板目突板練り付け |
本体内側 | シナ合板 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Nさんが施工) |
天板 | タモ板目無垢材 |
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脚部 | タモ板目無垢材 |
塗装 | ワトコオイル塗装「ナチュラル」(Nさんが施工) |
ナラのステンレスのキッチン
価格:980,000円(制作費、塗装は施主様施工、設備機器は別途)
タモ柾目のラウンドテーブル
価格:230,000円(制作費、塗装は施主様施工)
*運送搬入費・取付工事費が別に掛かります。
(目安として、運送搬入費は30,000円から、取付施工費は130,000円から)