かきわけて探す
「ウォールナット板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン」
世田谷 M様
design:無添加計画さん/Mさん/daisuke imai
planning:Mさん/daisuke imai
producer:iku nogami
painting:iku nogami
私がトミヤさんという人物と出会ったのは、そう今から10年前になるのですね。ふじみ野のKさんのキッチンを作らせて頂いた時でした。
そのあとに越谷のOさんの時にも。
とても魅力がある人で出会ったら忘れられない印象があって、なんというか変な言い方ですけれど、鏡に映った自分と話しているように錯覚することがあったのです。
「いやあ、僕はもともと話しするのが苦手でっ。」って言っていたような気がしましたが、全くそのような風貌に見えず、ひたすら大きな声で気持ちを届けることが上手な人だって印象を受けていたのですが、鏡に映った、と思ったのは、昨年今回のMさんのお仕事に携わらせて頂くことになったため、その打ち合わせにはるばる浦和からいらしてくださった時でした。
トミヤさんは家を考える人、私は家具を考える人。その対象は違っていてもふと見せてくれる気持ちがこれほど似ている部分があるのだなあ、と不思議に思ったのです。
もの作りの考え方は良い面もあれば悪い面もあって、それを知っているからきちんと前に進むことができるんだって、お話をしているとはっきりと覚えたのを思い出します。
だから、その打ち合わせの時だって10年間数えても5、6回しか会っていないしそれほど話こともないだろうに、17時にこちらに来てくださってから、22時ごろまで何も食べずに夢中で話ができたのは、こうして近い気持ちの人っているんだなあ、という興味深さとうれしさからだったのだと思います。
その日にトミヤさんが帰られた後は体がホカホカして、気分が高揚していたのを思い出します。
さて、お話は分かりまして、Mさんとはどのようにして出会ったのかと言いますと、最初クレミルにいらしてくれたんですよね、ご家族で。
物静かなご家族、という印象を最初は抱いておりまして、静かにいろいろと見ていてくださるけれど、なかなか帰らない。(笑)
私たちのことを気に入ってくださったのかなあ・・、どうなのだろう・・、となかなかつかみにくいMさんの印象を受けながら、気が付くと陽もすっかり落ちて展覧会も終わるころの時間でした。
その帰りの時間が近づいたころにようやく「実は今、新居の設計の最中でイマイさんのキッチンに興味があってこうしてお邪魔させて頂いたのです。」
「そうだったのですね。」
でも、もう打ち合わせするにはちょっと時間も遅くなってしまったし、どうしようかなと思っておりましたら、
「もうしばらくしましたら、キッチンの要望もある程度まとまってくると思います。あらためてその時に打ち合わせさせてください。」ということで、その日はクレミルだけを楽しんで帰られたのでした。
(うん、きっと本当に楽しんでいらっしゃったと思う。だって途中でご主人ソファでお昼寝していたくらいリラックスしていましたものね。)
後日、キッチンの打ち合わせを行ないたい、ということであらためてMさんご家族とご一緒に暮らすお母様も一緒にいらしてくださいました。
あの時は物静かに思えたMさん実はいろいろと思いめぐらすところがありましたようで、いろんなアイデアが出てきます。どちらかというと奥様のほうが堅実なご意見。そして、お母様もMさんのお母さんということで、とてもお話がお好きな方。結局この日はお母様のお話がメインで全体としての打ち合わせがようやく一歩踏み出したところでした。
でも、まだお部屋の間取りも正確に決まっていないし、まだまだプランはまとまらないかもしれないなあと思ってふと平面図を見ると、施工会社さんは無添加計画さんの名前が。
おや、まあ。
その後、Mさんのお話を聞くとやっぱりトミヤさんのお名前が。どうやらMさんの思いだとキッチンがメーカーの規格だと当てはまらないようで、オーダーにするならイマイさんに、と声をかけてくださったのだそうです。
うれしいご縁を頂き、ありがとうございます。
それから、本格的な打ち合わせが始まります。間取りがほぼ決まってMさんの子世帯のキッチンは、ご主人の強い思いが詰まった形でおおよそまとまってきました。
まだフワッとしていたのは、1階に住むお父さんお母さんの動線やキッチンのプランのほうでした。
「イマイさん、私はね、こうして色々としゃべっちゃっているけれど、結局はね与えられた形に合わせて収納するから形はどんな形でも大丈夫よ。」と言ってくださるのですが、なかなか何をきっかけにしたらよいかが分からない。
Mさんの奥様に手伝ってもらって、おおよその形はまとまったのだけれど、はたしてこれで良いのだろうか・・。と不安を覚えるのでした。
なぜなら、ご実家に打ち合わせにお伺いした時のキッチンの雰囲気がそれはもう独特だったからです。
(言ってよいのかな、奥様から事前に聞いてはおりましたが、もの凄い物の量なのでした。そのものに囲まれてお父さんとお母さんがいて、お父さんは学者さんでして、ジブリ映画に出てくるようなとても特長ある方で、そのお二人がそのリビングキッチンに居るとまるで映画を見ているような。)
「私はね、いつもジイジ(お父様のこと)にはこれをこうして出しているからこの場所はここが使いやすいのよ。」
「で、ここの香辛料たちは中にしまっちゃうと、見えなくなっちゃうと使わなくなっちゃうじゃない。だからこうしてピンチで挟んでここにつるしておくのよ。」
なるほどー、でも、この量を新しいキッチンにまとめらるかな・・。とその時は不安になったのです。
でも、こうしてカウンターの上に出ているものはそれほど特別なものではなく、毎日よく使うものたちばかりでうまく見せられるようにすれば使いにくくならないのではないかな、あまり場所を限定しないで考えよう、そういう方向でお話を進めていくことにしました。
お母様も元々それほど具体的な収納についてのイメージをおっしゃっていなかったので、なんでもしまいやすく見えやすい形を念頭に置いて、キッチンから移動して別のお話をリビングで聞かせて頂いていた時でした。
ふと、お母様が好きなものの話になったのです。
その時に出たのが、少しクラシカルなデザインの書棚。ちょうどお話していた場所の背面にあった立派な作り付けの本棚です。これはこの実家を立てた時に作ってもらったものだそうで、こういう装飾のある形が好きなのだ、とここで初めて告白されたのでした。
そうでしたか・・。
と、私はうれしくなったのでした。
だって、それまでは使い勝手のお話ばかりしていてもなかなか「これこれっ!」っていうところに辿り着かなかったのですが、お母様の大好きなイメージを一つもらえたわけですから。
もともと真っ白にしようと考えていたキッチンにちょっとだけ遊び心を入れて、こうして1階のキッチンと食器収納ができあがったのでした。
もの作りの考えかたには良い面も悪い面もあります。
それなりのものはいかようにでも作れてしまうけれど、何がその人にとって良いことなのかを知ることができてそれが作るものに込められたら、それは使う人に撮って宝物になるはず。
Mさんご家族のキッチンはご主人の臨場感あふれるコミュニケーションで使いやすい形はすでに見つかっておりました。
でも、お母様に辿り着くことが・・。
今回、お母様のその良いことをこうして知ることができたのが、私の今回の大きな仕事だったのかもしれません。
Mさんの良い形は、写真で追って詳しくご説明します。
いろんな魅力満載のキッチンができあがりました。
Mさん、トミヤさん、ありがとうございました。
天板 | ステンレスヘアライン |
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扉・前板 | ウォールナット板目突板練り付け |
本体外側 | ウォールナット板目突板練り付け/ウォールナット板目無垢材 |
本体内側 | ポリエステル化粧板「ホワイト」 |
塗装 | オイル塗装仕上げ |
ウォールナット板目材とステンレスヘアラインのオーダーキッチン
費用につきましては、お問い合わせくださいませ。